映画「ツイッギー」を観てきたのだが、その中で1960年代のモデルスクールは上流階級出身の令嬢が多かったというシーンがあり、興味を持った。もちろん、成り上がりも多いのだが、たしかに言われてみると、上流階級出身のモデルは多い。ちなみに、ツイッギーは労働者階級出身で、その点も当時としては珍しかったようだ。

 

例えば、2023年に亡くなったジェーン・バーキンは、エルメスのアイコニックな鞄の”バーキン”の由来にもなっているが、女優・歌手としてもモデルとしても活躍した。彼女の出たバーキン家はレース業で財を成して政治家も輩出した准男爵家である。また、2020年に50歳で亡くなってしまったがステラ・テナント。カール・ラガーフェルドのミューズとして、シャネルのモデルとして有名になった。父方の祖父がグレンコナー男爵、母方の祖父はデヴォンシャー公爵という両親から貴族の血をひいている。同じくカール・ラガーフェルドのミューズだったイネス・ド・ラ・フレサンジュは、父親がフランスの名門貴族で伯爵である。

 

存命のモデルをみてみても、例えば、カーラ・デルヴィーニュは、モデルとしても歌手・女優としても活躍しているが、父方の曾祖父がグリーンウッド子爵であり、貴族の血筋である。レディ・キティ・スペンサーは、ドルチェ&ガッバーナのモデルとしてランウェイを歩き、南アフリカの大富豪と結婚したが、ダイアナ妃の姪にあたる。父親はスペンサー伯爵であり、Ladyの称号を持っている。

 

レディ・キティは王族の親戚に過ぎないが、王族のモデルもおり、レディ・アメリア・ウィンザーがいる。ジョージ5世の玄孫であり、父親はセント・アンドルーズ伯爵ジョージ・ウィンザーであり、彼女自身は王位継承順位が第44位という英国王族である。男性だと、デンマークのヨアキム王子の息子のモンペザ伯爵ニコライ閣下(元王子)とモンペザ伯爵フェリックス閣下(元王子)もモデルとしてランウェイを歩いた。ちなみに、元王子としているのはマルグレーテ女王が王族縮小のために王子の称号をはく奪したためで、現在はモンペザ伯爵閣下である。動画の人物はニコライ閣下。

 

イタリア・ギリシャ等は、すでに王政廃止しているが、名家の末裔もモデルとして活躍している。例えば、マリア=オリンピア王女。ギリシャのパウロス元王太子の令嬢で、ギリシャ王国最後の国王コンスタンティノス2世の孫にあたり王女の称号を持っている。ギリシャは1974年に王制を廃止しているものの、デンマーク王家との血縁関係もある(エリザベス女王と結婚したフィリップ王配もギリシャ王子だった)。ヴィットーリア・ディ・サヴォイア王女もモデルとして活躍しているが、イタリアの旧王家・サヴォイア家の末裔で、曾祖父がイタリア最後の国王ウンベルト2世である。イタリア貴族ボロメオ家出身のベアトリーチェ・ボロメオもモデルだったが、モナコ公国の公子であるピエール・カシラギと結婚しモナコ公家の一員となっている。その他、カロリーナ王女キアラ王女がモデルとして活躍しているが、父親がシチリア・ブルボン王家ならびに両シチリア王国の王位継承権者である。次の動画は、ベアトリーチェ・ボロメオ公子夫人。

 

他にも王族・貴族ではないが、財界人の子女などもモデル界には数多い。なぜだろうか?単純にモデルになるには美容やオーディション参加のコスト等を負担できる必要があるし、自前で宝飾品を用意する場合もあるため、お金がないとモデルになれないという事情もある。また、モデルは成功確率が低く、長く活動できず、収入も浮き沈みがあるが、上流階級であればそうした金銭的な問題はない。加えて、上流階級の子女としても、露出していた方が様々な出会いがあるので、結婚相手探しにも良いという事情もあるだろうし、別に自身がビジネスを展開している場合、その宣伝にもなる。それにやはり財力・家柄が良いほど、容姿・教育水準等が良い人と結婚するわけであり、栄養状態も良いので、体格・容姿も一般人より良い人が多いという背景もありそうだ。ブランド側も階級がより上の人が来てくれた方が箔が付くというもであり、様々な利害関係が一致しているのだろう。ただ現在では家柄等に関係なくモデルになっている人も大勢おり、モデルになる人の家柄が良い傾向があるという統計的な根拠はないのであしからず。