私が登録しているチャンネルで社會部部長というものがある。地政学などの観点から政治や歴史等についてまとめているチャンネルであるが、運営者のプロフィールは明かされていない(おそらく個人でやっているか知らないが、大学院レベルの教育は少なくとも受けていると思う。独学でこの博学さだとしたら驚異的である。またはリサーチ担当と編集担当等で分かれておりチームで作成している可能性もある)。内容が非常に濃く勉強になるチャンネルであるのでおすすめしたい。実はこちらのチャンネル、本を出版しており、ベストセラーになっているので、読んでみた。発売早々に買ったが、あれこれ忙しくて結局、ようやく読み終わった(;´∀`)

 

地政学の入門書の入門書という位置づけと謙遜しているが、示唆に富んでおり、非常に勉強になるので、国際政治等に興味があればおすすめしたい。地政学は決定論や宿命論といわれることもあるが、そうではないという。日本が島国であるというのは前提であり、これは変更できない客観的事実であり、こうした現実を直視し、各国の政策決定において、地理的環境がどのような影響を与えるのかを考えることが地政学の与えてくれる視座である。人間は自由に考え動いていると思っているが、実際には重力という制約が前提にある。まさに地理的環境こそが国家にとっての重力なのである。

 

例えば、大陸国家は、海洋国家に比べて、対抗する軍事連合を形成される確率が歴史的に見て高い(過去500年のデータによると約2.7倍だそうだ)。なぜなら陸続きの強国は、移動がしやすいので、海洋国家よりも脅威となりえるからである。つまり、軍事力が世界最強のアメリカを恐れる国はあまりいないが、アメリカよりも数段も弱いにも関わらず、ロシアや中国が恐れられているのは、陸続きで移動が容易であるからだ。

 

目下ウクライナと戦争中のロシアは、国土が広いが、その国境の大半は平地であり、外敵の侵入が容易である。結果的に物理的に距離を確保しておかないと、国の中枢に外敵が侵攻できてしまう。ロシアは強い国と思われているが、実際は、何度も侵攻を受けて国土を蹂躙されてきた国であり、安全保障のトラウマが強い。そこでロシアは広い国土を志向し、安全のために外敵と物理的な距離を確保するために、緩衝地帯を欲している。その役割を果たしたのが東欧諸国である。ウクライナのNATO加盟に極端にロシアが反発し、ウクライナ侵攻まで行ったのは、NATOという国境を接するに危機感を持ったためだ。NATOの東方拡大により安全保障の危機が訪れるというのは、米シカゴ大のミアシャイマーが指摘していたが、欧米諸国は東方拡大を進めて今回のウクライナ危機を招いてしまった。これは善悪の問題ではなく、緩衝地帯を消滅させると有事を生じさせるという現実を示している。

 

そして現在、潜在覇権国として米国の地位を脅かすポテンシャルがあるのが中国であるが、中国が海洋進出を進めているのは、米国軍によって第一列島線の中に閉じ込められており、これを突破したいためである。実際、太平洋に出ようとする場合、日本・台湾・フィリピンなどの米国サイドの国が障壁となる。そして、中国は東南アジアへの進出も進めているが、これは、貿易量の6割がマラッカ海峡を通過するため、マラッカ海峡が封鎖された場合、中国経済にとっては喉を刺されるのと同じぐらいの打撃になりえるので、東南アジアに牽制しておきたいという意図である。もしマラッカ海峡が封鎖された場合に備え、ミャンマーから陸路での輸送ルートなどを確保するため、ミャンマーに中国が裏で介入している噂は根強いが実際に介入しているのだろう。

 

そしてこうした中国やロシアを封じ込めたいのがアメリカである。ロシアがアメリカを攻撃しようとすると、NATO諸国が存在するので、直接攻撃されることはない。また、中国がアメリカを攻撃しようとしても、日本・韓国・フィリピン・オーストラリアがアメリカの同盟国なのでこれが障壁となるのだ。そしてアメリカは東アジアにおいては韓国と日本の日米韓の連携が戦略上重要とみているが、なぜなら中国と有事の際は、日本は空軍の基地機能であるが、韓国は大陸への上陸拠点となるからだ。欧州ではイギリスとフランスがこれに当たる。大陸側に同盟国がないと、上陸拠点がないため軍事戦略上、制約が出てしまうからだ。

 

地理的な背景を踏まえて、各国の外交等をみると、たしかにそうだなとストンと落ちてくる。よく日本では国際政治を考える際に、思想対立・経済問題等がフィーチャーされるが、その根底にあるのは、地政学なのだと感じた。非常に分かりやすい一冊なので、おすすめである。ユーチューバーチャンネルは無料なのでこちらもおすすめしたい。本を読みよる気軽である。