吉本所属の芸人のたかまつなな氏が、SNSで年金改革を擁護する発信をし、大炎上となっている。
なお、過激な誹謗中傷が相次ぎ、法的措置も検討するとしている(LINK)。
議論は歓迎すべきだが、誹謗中傷は許されない。
■ 炎上を受けて作成されたたかまつなな氏のnote
それにしてもたかまつなな氏は、年金制度のおかしさに注目を集めた点で、非常に良いアジェンダ設定をしてくれたと思う。というか、そもそも炎上を狙い、年金制度の歪さを世に知らしめるために、あえて嫌われ役を買って出て炎上させたのではないかとすら思ってしまう。
現在の年金制度は、賦課方式だが、現役世代から高齢者への上納システムである。現役世代から社会保険料と称してお金を取り立て、高齢者に莫大な所得移転を行っているのが現状である。結果的に現役世代はお金がないので消費も低迷しており、また、現在不安から結婚・出産に踏み切る人が減り、猛烈な少子化をまねている。
賦課方式は現役世代のほうが多ければ成り立つが、日本のような超高齢化社会では、支える側のほうが少ないので、制度がもたない。1990年生まれは127万人いたが、去年の出生数は70万人割れで、34年で出生数はほぼ半減近く回復の見込みもない。現役世代が高齢者を支えるのは日本の人口構成では維持が不可能である。年金額も今後は減額されていくだろう。要は払い損である。
さらにたかまつなな氏の功績は年金は「労使折半」でお得と指摘したことだ。社会保険料は労使折半なので、労働者からみればお得な制度といいたかったようであるが、会社からみれば人件費には違いがなく、会社は、会社負担の社会保険料を踏まえて労働者の賃金を決めているのだから、お得とは言えない。
この会社負担は給与明細には基本的に載っていないが、大和財託では会社負担分の社会保険料も給与明細に載せているそうである;社長が給与明細の事例を掲載している。労働者が目にする通常の給与明細だと、支給48.5万円で手取りが35.1万だが、実際には、会社負担分を含めると、支給56.4万円で、手取りはたった35.1万円である。要は4割近くが税金と社会保険料とさっぴかれているのが実態なのだ。労使折半にしているのは、負担感をごまかす官僚の悪知恵である。全企業が会社負担分の社会保険料も給与明細に載せれば、労働者の意識は変わるだろう。
予告通り今月支給の給料明細から会社負担分の社会保険料とそれを含む総支給額を記載する。この社員の場合56.4万円の総支給額であるが手取りは35.1万円だ。社員の手取りを増やすために経営しているがやるせなさを感じるし、社員自身今まで以上に負担感を感じると思う。これで政治に関心を持ってほしい pic.twitter.com/O3M67j8jwe
— 藤原正明@大和財託 資産価値共創業 (@fujiwaramasaaki) September 15, 2023
そもそも国民年金は破綻した制度である。未納率は半分近くになっている。この財源の不足を補うために、厚生年金の財源から国民年金に流用しているが、こんなのは財産権の侵害である。これから氷河期世代が高齢者になると無年金者が大量に出るが、無年金の人は、財産がない限り、生活保護を受給するしかない。生活保護の受給額は国民年金の2倍もあり医療費なども無料などの特典付きである。低賃金層はだったら保険料などは払わず、生活保護制度に「ただ乗り」したほうが経済合理的になってしまっている。今後、合理的選択をする人が増えると社会保障制が破綻してしまうし、生活保護世帯が急増すれば財政がもたない。
このソリューションは簡単で、最低保障年金制度にすればいい(LINK)。最低保障年金は、基礎年金はすべて税金(消費税)でまかなう制度である。ただ過去に何度か提案されては廃案に追い込まれてきた。社会保険料の負担は減り、現役世帯は助かるが、消費増税になるので、負担が増える高齢者は反対するので、政治的には推進が難しい。いまの高齢者からすれば、現役世帯から上納金が入るのに、そんなおいしい制度をやめるうまみがない。いまの高齢者からすれば、今の制度のまま逃げ切るのが正解なのだ。
というわけで、ソリューションはあるが、政治的には無理ということで、今の制度をだらだら続け、現役世帯の負担は増え、少子化は加速し、消費はさらに冷え込むというのがほぼ確定路線である。日本はまさに「茹でガエル」なのだ。