私は日本の将来については楽観的だったのであるが、ここにきて円安・インフレなどの要因に加えて、少子化の加速などもあり、いよいよ楽観視できない状態かもしれない。あと数年でどうこうなることはないが、数十年スパンでみた場合、日本はあまり豊かではない国に転落するだろう。かつて栄えて転落した現在のスペインやポルトガルのようになるだろう。
現に実質賃金は下がり続けている。実質賃金は22年4月以降、夏季賞与の押し上げ効果によりプラスに転じた24年6月と7月を除き、一貫してマイナスが続いている(LINK)。つまり、国民生活はどんどんと貧しくなっている。
何より問題はインフレしているのに、日本の家計金融資産は「預貯金」が半分以上である点だ。貯金するということは日本円に投資しているのと同じだが、この日本円という資産は、インフレでどんどん減価する。計算すると、10年間にわたり2%のインフレが続くと、100万円の購買力は約82万円となり、2割程度減価してしまう。デフレ経済に慣れ過ぎてしまっており、このことに気が付いていない人が多い。
出生数の低下も深刻である。2024年の日本の出生数は、前年比5.8%減の68.5万人になる見通しである(LINK)。2016年から2023年までの年平均の減少率は4.0%だった。つまり、少子化が加速しているということである。実質賃金の低下で、将来不安から結婚・出産を控える人も増えるだろう。これだけの少子化だと賦課方式の現行の社会保障制は維持が無理だ。ちなみに、「2025年問題」というが、今年は国民の5人に1人が後期高齢者になる。
そして氷河期世代の問題がある。経済学者・ブロガーで作家の池田信夫氏の記事で最近話題なのが次の記事だ。就職氷河期世代は非正規雇用が多く、国民年金だが、国民年金は、未納者に加えて、免除・猶予者もおり、その割合は5割超(LINK)である。氷河期世代が60代になる時期には800万人の無年金老人が出現するが、これによって生活保護の受給者は現在の5倍に膨れ上がり、財政がもたない。生活保護を受けられない高齢フリーターは都市部に集まりスラム化するエリアが出てくるだろうという。遠い未来の話かと思いきや、5年もすれば就職氷河期世代が60台に突入していくから、遠い未来の話ではない。
現在でも大幅な財政赤字であり、今後も増税が続くだろう。すでに2026年4月から「子ども・子育て支援金」制度がスタートするが、社会保険料の上乗せであり、要は名を変えた増税である。会社員・公務員の場合、年収600万円でも月1000円、年間1万2000円の負担増(2028年度)になる見込みである。2028年度には、年収1000万円以上の場合、年間月2万円近い負担増である。手取りが減少して、若者はますます結婚しなくなり、少子化が加速するだろう。
まとめると、今後、ますます少子化で財政はひっ迫し、社会保障制度は維持が難しくなる。現役世帯は増税で手取りが減少していく上に、預貯金もインフレで減価していく。さらに数年もすれば徐々に氷河期世代が貧困老人と化して都市をスラム化させていく。これは悲観的なシミュレーションではなく、現状のまま進むと起こりえる現実である。
率直な感想であるが、昨今の経済状態・社会情勢をみると、いよいよヤバそうな感じになってきる。ただ日本人は政治参加の意欲も低いため、このまま「茹でガエル」になるだろうと思う。まだまだ大丈夫から、いよいよヤバイ状態に差し掛かっているが、5年後にどうなっているだろうか。あまり楽観視はできないと思う。

