本日は東京オペラシティまでシャルル・リシャール=アムランさんのピアノリサイタルへ行ってきた。カナダ・ケベック州出身のピアニストである。ショパンコンクールで第2位に入賞し、ソナタ賞を受賞し時の人となった。ショパンコンクールではヤマハを弾いていたが、今回のリサイタルでもピアノはヤマハだった。コンクールではやはりエレガントでダイナミックな音のスタインウェイが好まれるが、ヤマハやカワイを選ぶピアニストも増えているのは日本人としては嬉しい限りだ。以前、カナダにいたときもリサイタルを聞いているが(LINK)、好きなピアニストなので再訪した。

 

本当にモーツァルトが珠玉。音がルビー、サファイア、エメラルドのように鮮やかに変化する。純白の真珠の煌めきのようでもある。音は角がなく弧を描くようになめらかな音響を形作る。本当に美しい。音の強弱のつけ方が特徴的で月並みさや単調さを回避して、良いスパイスになっている。伸びやかで穏やかな演奏にとにかくリラックスさせられる。ベートーヴェンの月光ソナタも素晴らしい。この標題は、詩人ルートヴィヒ・レルシュタープが、レルシュタープが、この曲の第1楽章について「スイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」と表現したことに由来するが、アムランさんの演奏は穏やかに揺蕩う湖の水面に反射する月光の揺らめき。

 

後半はショパンが続くが、こちらも滑らかな曲線の描く音響の造形美。ルバートで絶妙で、有機的に音を連ね生命力を感じる響き。ワルツの14番の非常に速いパッセージも無理がない。フレージングが絶妙で息苦しさがない。ショパンでも音色の変化が見事だが、ペダリングに工夫があるのではないかと思ったが、1階の後ろの方だったのでペダリングが見えなかったのが悔やまれる。ワルツは曲順が変更されているが、調の連なりを意識しているのだろう。

 

アンコールのノクターン嬰ハ短調 遺作は繊細に奏でるが、感傷的ではなく、音がとにかく澄んで彼方へと響く。ブラームスの6つの小品 op.118-2も極上。どこか達観した玄人の域に達しつつある。最後のアンコール曲は、ファリャの「恋は魔術師より演奏会用アレグロ」であるが、情熱と魅惑さのある曲風で、華やかにリサイタルを締めくくった。いや、ブラボー!

 

【曲目】

モーツァルト:ロンド ニ長調 K.485、ロンド イ短調 K.511、ロンド ヘ長調 K.494

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 op.27-2「月光」


ショパン:
演奏会用アレグロ イ長調 op.46
ワルツ 第14番ホ短調(遺作)
ワルツ 第3番イ短調 op.34-2
ワルツ 第4番ヘ長調 op.34-3「華麗なるワルツ」
ワルツ 第12番ヘ短調 op.70-2
ワルツ 第6番 変ニ長調 op.64-1「小犬のワルツ」
ワルツ 第7番 嬰ハ短調 op.64-2
ワルツ 第8番 変イ長調 op.64-3
ワルツ 第5番 変イ長調 op.42

 

アンコール

ショパン:ノクターン 嬰ハ短調 遺作

ブラームス:6つの小品 op.118-2

ファリャ:恋は魔術師より演奏会用アレグロ

 

(追伸)ただ曲目が人気曲が多かったこともあり、客層が良くなかったのが悔やまれる。のど飴とかの包み紙を開いているのだろうけど、ガサゴソうるさい(2~3か所から結構な音が継続的にした)。オペラシティは音がとても響くので勘弁してほしい。挙句に私の席のおじいちゃんは演奏中に話し始めるし・・・。クラシック音楽をお高く留まったものにする気はないけれど、演奏者への敬意をこめて、演奏中は可能な限り静かにしてほしい。生理現象の咳とかは仕方がないし、ちょっとした物音は仕方がないけど。。以前もパシャパシャ写真を撮り始める人とか、不自然なほどに大きな咳払いを続ける人とかいたけど、私がチケット代金を払い戻すので出ってほしかった。。