女王エリザベス2世が2022年に亡くなられ、そして今年に入りデンマークの女王マルグレーテ2世が退位され、その息子のフレデリック10世が新国王に即位。900年ぶりの生前の王位継承である。女王マルグレーテ2世の生前退位により、欧州では女性君主が不在となったが、世界の主要国でも女性君主は不在である。なお、フレデリック10世の配偶者はオーストラリアのタスマニア出身のメアリー氏(両親はスコットランド出身)である。

 

ちなみに、デンマーク王国は約596万人の人口規模(LINK)の小国である。千葉県が約627万人だから、千葉県よりも小さい人口規模の国である。首都のコペンハーゲンは人口約66万人であり、日本の政令指定都市の岡山市71万人・静岡市67万人より少々人口が少ない。

 

よく日本人は、「極東の小さな島国」という表現をするが、欧州だと確実に嫌味になるので要注意である。日本の人口・国土面積は、欧州随一の大国のドイツよりも大きく、経済力はピークアウトし円安でも、北欧4か国・ベネルクス3か国を合計しても日本のほうが大きい。日本人の謙虚さは時にはただの嫌味にもなりえる。

 

さて、このフレデリック10世であるが、母君は女王マルグレーテ2世であり、その父君はフレゼリク王太子(後のデンマーク国王フレゼリク9世)で、母君はスウェーデン王女イングリッドだった。このマルグレーテ2世の王配(要は旦那さん)は、フランスの元外交官のヘンリック氏である。このヘンリック氏は由緒あるフランスの家系(ラボルド・ド・モンプザ家)であり、一部では伯爵位を有する貴族と言われていたが、「自称貴族」に過ぎなかったことが判明している。どうやら一族は地主であり、その保有する土地について貴族所領との勅許状はあるものの、貴族身分の認可は得ていないということである。

 

しかし、女王の次男ヨアキム王子の4人の子女が、王子・王女の称号はく奪の際に、モンペザ伯爵位を創設されたため、モンプザ家はデンマーク王家と結びつき、ついにデンマークにおいて正式な貴族称号を得るにいたった。ちなみに、英国と違い、デンマークは家族で同じ爵位名を保有できるため、いまのところモンペザ伯爵位(Count/Countess)は10名が所有している。

 

さて、君主に女性がいないということで、時代が逆行するようであるが、しかし、現君主の退位後は、欧州は女性君主が増えることとなる。スウェーデンはヴィクトリア王太子、ベルギーはエリザベート王女、オランダはカタリナ=アマリア王女、スペインはレオノール王女が王位につく。数十年後、欧州君主は様変わりである。

 

ただ英国も君主制廃止の意見が強い。スウェーデンもヴィクトリア王太子の配偶者は、体育大卒のジム経営の平民出身者で反発も大きい。自国の君主の配偶者が庶民の元ジムトレーナーで納得するかどうかは見ものである。彼には王太子の配偶者として王族の待遇を受ける”正当性”(合理的理由)はあるが、政治的・歴史的な”正統性”はない。欧州王室は自由恋愛を尊重しているが、正統性が失われれば、それは君主制の維持が不可能になることを意味する。現代の自由社会において君主制が、もはや国民の支持を得られるかどうかという問題とも直結する。正統性のない王朝が維持されるのか、それとも滅びるのかは見ものであるが、歴史的にみると正統性のないものを維持するほど、社会は寛容でない。これは日本の皇室も対岸の火事ではない。