英国の外相に就任したデビッド・キャメロン元首相(57)は20日、議会上院(貴族院)で宣誓し、爵位を世襲できない「一代貴族」として上院議員となった。首相経験者が爵位を得て上院議員に就くのは1992年のサッチャー氏以来だ。- 読売新聞オンライン

 

英国は実は世界で唯一「貴族院」を保持している国である。貴族院は、世襲貴族などに加えて、一代貴族(男爵)により構成される。日本もかつては貴族院があったが戦後に廃止され、現在の参議院となっている。サッチャーも女男爵として貴族院議員であった。ちなみに、サッチャーの旦那さんのサー・デニス・サッチャーは、妻を献身的に支えたことで准男爵を授爵しており、准男爵は貴族ではないが世襲可能な称号ゆえ、長男が准男爵位を継いでいる(貴族ではないので敬称は"Lord"ではなく"Sir"である)。

 

それにしても、イギリスはこの貴族院にしても爵位制にしても、階級社会が分かりやすい。現在のスナク英首相はオックスフォード大卒・スタンフォード大学院修了(MBA)で、インド系だが奥さんがインフォシスの創業者令嬢で、夫婦の資産はあわせて1200億円ほどと見積もられている。本人も「労働者階級の友人はいない」とコメントするほどである。

 

ボリス・ジョンソン元首相もオックスフォード大卒で、父親が作家で欧州議会議員で、義理の曾祖父はバイエルン貴族で、家系図上は庶子の血統ではあるが英国王室とも遠縁にあたる。そして弟は男爵のジョー・ジョンソン卿であるが、一代貴族として貴族院議員である。


今回一代貴族になったデビッド・キャメロン卿はまだ庶民的かもしれないが、オックスフォード大卒である。実父は証券仲介業者だが、実母は准男爵令嬢であり、また、母方の血統をたどるとウィリアム4世の愛妾であったドロシー・ジョーダンの庶子の末裔で、それゆえ英国王室の遠縁にあたる。

 

ただ旧態依然とした貴族院は問題死されることも多く、実は幾度となく改革が試みられてきた。直近でもブレア政権やキャメロン政権等で改革が試みられたが、その後、英国EU離脱の混乱の中で棚上げ状態になっているということのようである。かつては世界の覇権国で「太陽の沈まない国」を呼ばれ、世界随一の大国だったが、最近では旧植民地のインドに経済力で追い抜かれて経済規模は世界第6位に低迷している。インフレや移民問題なども抱えており、栄枯盛衰である。