本当に訳が分からないけど、面白かったし、感動的でした。独創的な映像表現、独創的な設定、奇想天外な展開などどれも斬新で新鮮だった。映画「マトリックス」、日本アニメの「パプリカ」の影響は受けているが、さらに並行宇宙の世界観は映画「2001年宇宙の旅」、「花様年華」、「レミーのおいしいレストラン」。”闇鍋パロディ”で、滅茶苦茶に面白かった。ただ途中退席もパラパラ(映画「チタン」ほどじゃないけど笑)。

最初、ストーリーなどを厳密に理解しようとしたが無理だったが笑、監督が「スイス・アーミー・マン」を撮っていたことを思い出して、”壮大な悪ふざけ”としてみるとすごい腹落ち出来た。米国限定公開のはずが、世界中で大ヒットしてアカデミー賞10部門11ノミネート。作品賞は分からないが、編集賞などは受賞しそうだ。

いろいろ設定がすさまっじいのだが、それにしても並行宇宙の自分にアクセスしてその能力をダウンロードするのに、異常行動をしないといけないという設定がハチャメチャで笑った。お尻にトロフィーぶっさした敵(下半身モザイク)とのキレのあるアクションシーンは、何を観させられているのかと半笑いだった笑。自分の殻を破れということだろう。

そして、マルチバース(並行宇宙)のSF物語と思ったら、家族愛がテーマ。こんだけ大風呂敷を広げて、まとまるのかと思って心配だったが、ちゃんとまとまってて安心した。

人生の選択で分岐していく並行宇宙。マルチバースはインターネット世界のことらしいが、いろんなアカウントで様々なサイトにログインする現代人を意味しているのかもしれない。ネット世界では人々はSNSや匿名アカウントで並行して様々な人格を演じる。ネット世界でも様々な人を演じることも可能でありエンジョイする人もいれば、逆に可能性の洪水につかれてしまう人もいる。

暗黒のベーグルは、ジョイのそうした諦念と破滅願望の象徴である。それから救ったのは改心した母の愛だった。重要なのは多様性を受け入れて、愛をもって接するということ。価値観の押し付けは破滅をもたらすのだ。いろんなところに貼れる目のおもちゃが出てくるが、それが言わんとするのは「開眼せよ!」であろう。そして、この外が白で中が黒の目は、暗黒のベーグルの逆になっているのが、対極的で面白い。

正直、訳が分からないが、面白いことは面白い。ただトリッキーな設定や展開を受け付けない人にはオススメしない。奇想天外な作品だったが、映画の表現範囲はまだ進化するのかと凄い刺激になった。拍手喝采。

追伸:料理人になった世界線での男のシェフ、なんか見たことあるなと思ったらハリー・シャム・ジュニアか。Gleeのマイク・チャン役。旦那役のジョナサン・キーも絶対になんかで観たことあると思ったら、「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」「グーニーズ」の子役か!それにしてもアジア系俳優女優の存在感が増しているのにアジアの台頭を感じる。

 

★4.5 / 5.0