OpenAIという米国法人が公開したAIである。チャット形式で入力すると、AIが回答を返してくれるというものである。このChatGPTは、米国の全州共通の選択式司法試験で2科目で平均を超えたらしく、また、スタンフォード大学では期末試験でこのAIを使用している学生も一定数いるという。ちなみに、名門ペンシルベニア大学ウォートンビジネススクールのMBA課程の卒業試験でBB-評価も得たというから驚きである。検索大手のGoogleはこのAIの登場に驚愕し、緊急事態に陥っているそうだ(LINK)。
メディアでも取り上げられており、かなり話題になっている。
私も試しに使ってみたのだが、これはすごい(๑°ㅁ°๑)!!(と最初は思った)。
まず、「~について教えて」というQ&Aはもちろんだが、条件を指定した上でエッセイの執筆もできるし、文法問題について選択問題をつくってほしいといえば問題を作成するし、文章を入力して文法ミスを教えてといえば教えてくれるし、翻訳もできてしまう。おまけに日本語にも対応している。下手なライターや翻訳家は、現実問題としてAIによって駆逐されそうである。
例えば、「AIで人間は仕事がなくなりますか?」という問いの答えは、「人工知能(AI)は、特定のタスクを自動化することができますが、人間の仕事を完全に取り替えることはありません。代わりに、人間がより高度なタスクに集中することができます。AIが可能なタスクに対する需要が増加する一方で、人間のスキルを要するタスクもますます増加しています。人工知能は、ビジネスの変革をもたらす可能性がありますが、人間とともに使用することが重要であり、人間の仕事を補完することが期待されています。」であり、正論が返ってきた。単純な質問などはそれなりに精度が高いと思う。
ただ一方で、出てきた回答はあくまでネットの情報をうまく組み合わせただけのようで、難しい問いかけについてはおかしな回答もあるので、使用者の真贋を見極める力も必要だ。
例えば、「韓国の出生率の低下の要因を教えて」と質問したら、回答の一部に「不妊治療の進歩: 韓国では不妊治療のレベルが高く、不妊治療を受けることで、妊娠・出産が遅れることが少なくなっています。」(抜粋)とあったが、不妊治療の進展は、出生率を上昇させる要因だろう。おそらく「不妊治療があることで女性が安心し、妊娠・出産を遅らせる人が増えたが、結果的には不妊治療が実らない人も多く、これも出生率低下の要因となっている」というのであれば理解できるが、先の文は意味が通らない。
また、映画監督兼俳優のグザヴィエ・ドランについて質問したら代表作が「エレファント」に「それでも夜は明ける」と書かれていたが、どちらも彼の代表作ではないので誤りである(「エレファント・ソング」なら正しいが)。また、刑法の「生理機能障害説」について質問したが、回答はそれっぽいのだが、的外れだった。回答の一部に「暴行罪は、人を負傷させることが目的である行為を指します」とあったが、負傷の意図がなくとも、例えば、威嚇のために石を相手の目の前にたたきつけたり、相手を畏怖させるために殴る仕草をして目の前で寸止めするなども暴行罪に該当するので、回答は間違いである。また、アジア人初のショパンピアノコンクール優勝は?と質問したが、チョソンジンと返ってきたが、誤りである。正解はベトナム人のダンタイソンである。
最初はすごい!と思ったが、やはり出てきた内容をみてみると、あくまでネットに転がってる情報をうまく集めているだけで、複数の情報を集約したり、推論したり、抽象的な思考とかまでは難しいのだと思う。とはいえ、機械翻訳すら10年前は大したことなかったが、現在では相当な精度である。Chat AIも2023年でこの精度だと10年後を想像すると恐ろしい。
産業革命以後、単純な肉体労働は機械で代替されたが、単純な知的作業はどんどんAIに置き換わっていくのだろう。これからAIが進んだ世界は、おそらく高度な知的作業ができる人のみがホワイトカラーとして労働できて、それ以外はAIに代替されるのだと思う。さて、代替された労働者はどうなるのだろうか?そうした心配は産業革命後もあったが、結局、新しい仕事が創出されたので、失業者だらけということにはなっていない。新技術は既存の単純な仕事を奪うが、あくまで補助ツールであり、SF映画が描くような、AIが人間社会を駆逐するようなことはないと思われるが、私の見方は楽観的過ぎるだろうか?私は思うも、科学技術の進展は社会の上位層で急速に進展するが、大多数の人類には無関係に進展し、”知的格差社会”がより顕著になるのだと思うが、ただその大多数は大多数で安穏と生活はしていくのだと思う。どの時代も多勢こそ正義なのだ。