米中に次ぎ世界第3位の日本の名目国内総生産(GDP)が、経済の長期停滞などを受けて早ければ2023年にもドイツに抜かれ、4位に転落する可能性が出てきた。近年の円安に伴うドルベースの経済規模の縮小に加え、「日本病」とも揶揄(やゆ)される低成長が経済をむしばんだ結果だ。専門家は企業の労働生産性や国際競争力を高める政策をテコ入れしなければ、遅くとも5年以内には抜かれる可能性が高いと警鐘を鳴らす。ー 産経新聞
2010年に中国にGDPで追い抜かれたが、世界第3位の経済大国としての地位は維持してきたが、ここにきて、まさか人口が日本よりも4000万人も少ないドイツにGDPで追い抜かれそうな情勢だという。一人当たりのGDPでみると、ドイツは日本の1.5倍ということになる。もちろん、GDPは米ドル計算なので円安になれば減り、円高になれば増えるので、あまり一喜一憂しても仕方がないが、ただ国力が僅差の国同士においての順位の入れ替わりは理解できるが、人口1憶2500万の国と、8300万の国の経済力順位の入れ替わりはなかなか衝撃的である。もともと”欧州の病人”と揶揄されたドイツ経済だが、シュレーダー政権の改革以後によって息を吹き返した。
また、ドイツ経済が強いのはユーロ導入の影響も大きい。つまり、経済力が強くなれば、通貨高になりやすいが、欧州は単一通貨なのでドイツがいくら経済好調でも、ユーロ圏でドイツ以外が低迷してくれれば、ドイツにとっては通貨安となり、輸出において有利なのである。結果、もともと輸出産業の強かったドイツに追い風となった。もともとドイツの影響力拡大を抑えるために通貨統合をフランスを推進したが、結果的にはドイツ一人勝ちの状態となった。日本は自力で円安誘導する必要があるが、ドイツは通貨統合により通貨安の恩恵に与れたのだ。
とはいえ、通貨安がいいのか、通貨高が良いのかという議論は、経済学者等でも意見が分かれており、難しいところである。アベノミクスによって金融緩和を行い、結果的に失業率は下がり歴史的な低水準となった。経済成長率も上向き、株価も上昇したことは事実であるが、コロナによって番狂わせとなった。一方で、円安誘導した結果、旅行先として人気になりインバウンド需要を喚起した。しかし、”日本は安い国”という印象付けることとなった。とはいいつつも、円安批判もあるが、民主党政権下で円高だったときは円高不況といわれ株価も1万円を割り込む水準だった。ちなみに、円高不況と言われいた当時は、一人当たりGDPは上昇し、2012年のときは世界第10位で、ドイツ・イギリスよりも上だった。
というわけで、経済規模は為替の影響が大きいので、そこまで騒ぐ必要はない。記事で参照しているのは名目GDPであるが、インフレを加味する実質GDPでは数値は異なる。名目で比較されると、インフレしている国のほうが伸びが大きく見えるが、単に物価が上がっただけで、賃金が上がっていないとそれは国民は貧しくなったということである;例えば、物の値段が1.5倍になると、企業の売上高は増え、GDPも増えるが、賃金が上がらないと、消費者は生活が苦しくなる。また、当然ながら為替の影響も大きいので、今後、円高に振れた場合、日本のGDPは米ドル換算だと増加する。いま日本政府は円安誘導しているので米ドル換算で目減りするのはいわば必然であり、米ドル換算のGDPで一喜一憂してもあまり仕方がないのだ。
それに欧米諸国はインフレがかなり激しいが、日本のインフレは欧米に比して、だいぶ穏やかなものである。アメリカは利上げして景気を犠牲にしてもインフレを止めようとしているが、なかなか止まらない。日本のメディアはいたずらに煽り立てるが、日本は治安も良く、失業率も低いし、容易に解雇もされないし、インフレも穏やか。日本は成長もしていないが、衰退もしていない。あまり悲観的なメディアの扇動的な記事で落胆する必要はないということだ。