Camilla, the new Queen Consort, has broken with centuries of tradition and appointed six of her closest friends as “Queen’s Companions”, replacing the role of royal ladies-in-waiting. --BBC

 

カミラ英国王妃が女官制度を廃止して、コンパニオンを任命したという。チャールズ三世は英国王室のスリム化などを主張しているが、そうした英国王室の在り方の見直しの一環だろうか。コンパニオンは女官と同じような立場にあるが、責任を担う範囲が女官に比べて縮小されており、スケジュール管理や外部対応などは行わず、また、非常勤だという。名誉職で経費のみが支給されるそうだ。

 

 

あまり日本ではちゃんと報道されていないが、興味深いので人選をみてみよう。全員カミラ王妃の友人だというが、英国の上流階級の交友関係をみてとれる。英国は貴族制が維持されており、階級社会が依然と残っている。従来的な労働者階級・中産階級・中上流階級・上流階級という構図は崩れてきて、7つの階級に分岐しているといわれるが(「7つの階級: 英国階級調査報告」)、爵位を有する貴族階級は歴然として存在してる(英国の世襲爵位は約800程度らしい)。

(ちなみに、カミラ王妃はお母さんが男爵令嬢だが、お父さんは陸軍少佐だったりする。パーティでチャールズと出会い交際を開始し、チャールズがダイアナと結婚後も関係を継続し、離婚後に再婚している。ウィリアムとヘンリーの二名はかなり複雑な感情だろう。)


(1)Sarah Troughton(サラ・トラウトン):ケント公爵夫人の元女官。お父さんはSir Timothy Colman(ガーター騎士団員)、お母さんは、ストラスモア=キングホーン伯爵の孫にあたるLady Mary Cecilia Bowes-Lyon。母方血統には第四代ハードウィック伯爵もいるそうだ。サラさんの祖父はエリザベス王太后の兄弟であり、そのため、チャールズ三世とは”またいとこ”に当たる。本人自体は特に敬称を有していないが、貴族の血統であり、英国王家とも血縁関係にある。

 

(2)Jane von Westenholz(ジェーン・フォン・ウェステンホルツ):ヘンリー王子をメーガン妃に紹介したヴァイオレット・フォン・ウェステンホルツの母親。情報があまり出てこなかったが、Piers von Westenholzの夫人のようだ。この旦那さんが"von"がついていることからも分かるように、ドイツ系の貴族のようで、男爵位の相続予定者のようである(ちなみに、フランス貴族の場合は、氏名の間に"de"がつく)。ただあくまでドイツは貴族制は廃止されているので、法的には英国において貴族ではないと思われる。ゆえに”Lady”の敬称もついていない。

 

(3)Lady Sarah Kewsick(レディ・サラ・ケスウィック):第16代ダルハウジー伯爵の令嬢。貴族令嬢なので"Lady"が敬称となっている。旦那さんが、サッカーのプレミアリーグ、アーセナルFC会長を15年間務めたサー・ジョン・チッペンデール・ケズウィック。ケズウィック家はスコットランドに起源をもつ大富豪一族。一族の総資産は1ドル100円として5000憶円ぐらいのようだ・・・(出典)。ちなみに、旦那さんに”Sir”の敬称がついているが、ケズウィック家は三世代目からSirの敬称がついているが、理由は分からず・・・。

 

(4)Fiona Petty-Fitzmaurice, Marchioness of Lansdowne(ランズダウン侯爵夫人フィオナ):肩書の通り貴族夫人である。Inchbald School of Designでインテリアデザイナーとして訓練を受けて民間企業で勤務していたが、仕事中に旦那さんに出会い結婚して貴族となったようだ。ご実家は不明だが、おそらく言及がないため貴族の血統ではないようである。Marchionessを公爵夫人(Duchess)と誤訳している日本語のページが散見されるが侯爵夫人が正しい。公爵と侯爵は別の爵位である。日本語は翻訳の際に中国の周王朝の爵位を使用したが、日本語だと公と侯が同じ発音で紛らわしくなった。

 

(5)Lady Katharine Brooke(レディ・キャサリン・ブルック):お父さんはMarmaduke Husseyは男爵(一代貴族)でBBCの理事会のチェアマンを歴任、母親はエリザベス2世女王の女官を長年務めたレディ・スーザン・ハッセー。レディ・スーザン・ハッセーは、ウォルデグレーヴ伯爵令嬢で、兄弟に政治家ウィリアム・ウォルドグレーブ男爵(一代貴族)がいる。レディ・スーザン・ハッセーの叔母は、エリザベス王太后の女官だった。

 

(6)Carlyn Chisholm, Baroness Chisholm of Owlpen(カーリン・チザム(女男爵)):お父さんが第6代レコンフィールド男爵で、お母さんが伯爵令嬢。お兄さんが文筆家のMax Wyndhamで、レコンフィールド男爵位はお兄さんが襲爵し、第7代レコンフィールド男爵となっている。カーリン・チザム氏本人はもともと貴族院議員であり、女男爵を授爵している。こちらはlife peeress(一代貴族)であり、先のレコンフィールド男爵位のようなHereditary peer(世襲貴族)とは異なる。英国では一代貴族として爵位が授けられる場合があるのだ。かの有名なサッチャーも女男爵(一代貴族)だった。

 

ちなみに、下記にレディとついている人とついていない人がいるが、大雑把にいうと、貴族の女性は”Lady”、貴族の男性は”Lord”で、准男爵・騎士爵の男性は”Sir”の敬称となる(准男爵・騎士爵は貴族ではなく平民である)。 上記では名前の後に爵位名を表記している場合は貴族と分かるので、"Lady"を付していない。

 

ちなみに、王族は”His or Her Royal Highness”(省略してHRHとも、殿下・妃殿下の意)の敬称が用いられるが、ヘンリー王子の子供はこのHRHが与えられずもめていた。最近ではデンマーク王家でも、王室縮小の一環で女王の孫4人が、王子・王女の称号・敬称を取り消され、一貴族として伯爵と扱われると発表された。これからはHRHではなく、敬称が"His or Her Excellency"になるらしく、もめている。