共産党の志位委員長は7日、党本部での会合で、ウクライナ情勢を踏まえ、「急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して、国民の命と日本の主権を守りぬくのが党の立場だ」と述べた。他党からは、自衛隊の解消を掲げる共産党の綱領と矛盾しているとの批判が出ている。
- 読売新聞
日本共産党がウクライナ問題で分が悪くなったと見て、掌返しを始めた。日本共産党は自衛隊は憲法9条に照らして違憲の立場で、下記の党の綱領にもある通り、「自衛隊の解消」を定めている。日本共産党は自衛隊は違憲だから解消することを目指しているが、しかし、ウクライナのように有事の際は自衛隊に守ってもらおうという。自衛隊が無くなれば自衛隊に守ってもらえないのにである。これを論理矛盾と言わずしてなんというのだろう?
3 自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる。
ウクライナ有事ではっきりしたのは、
① 軍事同盟に加盟していないと守ってもらえない(NATOは頑なに軍事介入しない)
② 軍事力がない国は侵攻されても抗えない(NATOから支援された武器でウクライナは戦っている)
③ 経済制裁をしても初動では撤退を促すまでの効果はない(ロシアはデフォルトを厭わない勢い)
④ 左翼は平気で掌を返す(違憲だから解消すべきといっていた自衛隊に守ってもらおうと言い出す)
ということだ。憲法9条を守っていれば平和、自衛隊は違憲だから解消といっていた夢想的な平和主義者は、さっさとウクライナの前線に乗り込んで平和の精神とやらを説いてロシア兵を説得すべきだ。都合が悪くなるとダンマリを決め込むどころか、散々憲法違反といっていたのに「自衛隊に頼りましょう」と言い出すのは厚顔無恥も甚だしい。
日本ではワイドショーでも報道される映像は控えめだが、ウクライナの現状は悲惨である。ナチスの鍵十字がナイフで刻まれ、さらにバーナーで焼かれた女性の遺体も発見されているし、乱暴された十歳前後の少女の遺体なども発見されており、これはウクライナの国会議員のSNSに投稿されている(画像を閲覧する場合は、一切自己責任で検索してほしい)。甚だしく吐き気がするおぞましい事実だが、これが戦争の現実である。
核保有国である中国は天安門事件では戦車で自国民をひき殺した。香港で天安門事件の写真集を見たが、凄惨だった。その本屋も二度目に訪れたら閉鎖されていた。先の香港への統制強化でも、悲惨な事件が多々起きていたが、日本のメディアではあまり報道されていない。チベット・ウイグルでは中国政府による人権侵害が続いており、無辜の人々が辛酸をなめている。北朝鮮も核保有国だが、その人権の状況は言うに及ばない。ロシアも世界最多の核兵器を保有しているが、ウクライナで残虐の限りを尽くし、日本と領土問題を抱える軍事大国である。これらの傍若無人な国に囲まれているのに、憲法9条があれば平和だの、自衛隊は違憲とぬかしていた有識者はウクライナ問題を踏まえて、日本の安全保障をいかにするのか、説明する義務がある。
「吉永小百合と姜尚中が緊急対談「新しい戦前」回避するために」という記事ではこんな荒唐無稽なやり取りが書かれている。
「吉永小百合(以下、吉永) 初めてお話したのは07年。私のラジオ番組に来ていただきました。そのとき私、姜先生に、こう質問しました。「『憲法9条を守ってほしい』と友人に言ったら『よその国が攻めてきたらどうするのか』と言われて、言葉に詰まってしまいました。なんと返せばよかったのでしょうか」って。姜先生は、「あの天文学的な軍事力を持っているアメリカでも、9.11のテロを防げなかった。だから日本も、アメリカ以上の軍事力を持たないと、武力で抑止するのはむずかしいし、それは不可能。憲法9条を持っていることのほうが、より安全を守れるんですよ」と答えてくださったんです。」
これは問答として成立していない。「よその国が攻めてきたらどうするのか?」という問いに、「抑止は難しいから憲法9条を守るのが大切」では答えになっていない。ウクライナを見ればわかるが、「よその国が攻めてきたら」、(ウクライナで起きているように)国民は生活に困窮し、拉致され、拷問され、強姦され、無残に虐殺されるのだ。これは歴史では幾度となく繰り返されている事実である。
武装した兵士がいまから女性を強姦しようというのに、女性が「憲法9条」と唱えれば突然、強姦をやめてくれると思っているなら、知能検査を受けた方がいい。本当に憲法9条にそんなパワーがあるなら、日本の夢想的平和主義者はウクライナの前線にいって、拉致される子供や強姦される女性を前に「憲法9条を唱えれば救わるのよ!」と教えてあげるべきだ。ロシアの超音速ミサイルが着弾して、木っ端みじんになる直前の犠牲者に「憲法9条」の素晴らしさをなぜ伝道しないのか。教えてあげないのは意地悪だ。早期にウクライナにってい、拷問・強姦の末に惨たらしく虐殺された犠牲者の遺族の前で「憲法9条があれば平和だったのに!」と演説してあげてほしい。ゼレンスキー大統領に武装解除をなぜいま進言しないのか?(当然だが皮肉である)
ロシア軍が北海道に上陸したり、尖閣諸島や沖縄県内に中国軍が上陸したり、北朝鮮が日本の国土を着弾するミサイルを発射したとき、憲法9条は守ってくれない。必要なのは迎撃システムと、抵抗できる軍事力である。歴史的な教訓は、戦争を起こさない知恵は、「勢力均衡(バランスオブパワー)」である。日本人の夢想的な平和主義の目を覚ます上で日本のメディアはウクライナの被害地域の生々しい現実をもっと報道すべきである。