| 世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン [ 渡辺 順子 ]
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当方はお酒だと、ビール・ワイン・日本酒が好きなのだが、正直、ワインは法外に高い値段のものも多いし、産地によっても品質にばらつきがあり、よく分からないところが多い。そこらへんは低廉なビールや、日本国内でほとんどが生産され、どれもある程度の品質が確保されている日本酒とは違う。ワインは欧州で文化が栄え、欧州の世界進出とともに世界にワイン文化が拡散していき、現在では日本・中国・チリ・オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカなどでも生産されている。ワイン系の解説本はワインの些末な歴史をたどっていたり、ワインの銘柄をひたすらに紹介するものなど、ちょっとマニアックなものが多い。ワインについて真面目に調べたことはなかったが、たまたま本屋で立ち読みしたのだが、なかなかよさそうなので読んでみた。本書は、各地域のワイン文化、味わい、投機対象としてのワインなど幅広いトピックを程よいバランスで描写しており、なんとも充実した一冊になっている。また筆者はNYのオークション会社のクリスティーズのワイン部門でスペシャリストとして勤務し、現在はワインの会社経営ということもあって、ワインを熟知しているようで、説明に説得力がある。
ワインの発祥はジョージアなど諸説あるが、エジプト・ギリシャなどから楽しまれ、ローマ帝国期にヨーロッパにもワイン文化がもたらされた。フランスは厳格に品質管理を行い、絶対王政下において上流階級の嗜みとしてワイン文化が醸成され、現在においてもブランドワインとして世界的に認知されている。一方で、イタリアもワインの名産地だが、もともと王国が乱立し、その後も政治的混乱もあり品質管理などで統一した基準もなく、また、イタリア人のあっけらかんとした性格ゆえに、ワイン文化はフランスのように上流階級文化ではなく庶民文化として親しまれた。高級なフランスワイン、庶民的なイタリアワインというのは歴史的な背景があるという。スペインワインも名産地であるが、国内情勢が不安定で、名ワイナリーが少ないという。ドイツワインも名品が多いに世界的なブランドにはならなかったのは、ドイツ語のワイン名が長くて分かりにくかったからだという。
ワインに法外な値段が付くようになったのはやはりアメリカでワインが投機対象としてオークションにかけられるようになってからのようである。アメリカはもともと禁酒法があり、アルコールを禁止していたのに、いまではワインが投機対象になりカリフォルニアワイナリーはフランスの名ワイナリーに匹敵する水準にあるから、面白いものだ。しかし、リーマンショック以降にアメリカのマーケットは縮小し、現在急成長を続けているのは中国の市場である。中国の新富裕層は高級ワインを高額で競り落とし、寝かせて熟成はそっちのけで、湯水のように消費していっている。一方でオーストラリアのワイナリーの「イエローテイル」のようにカジュアルなワインが売り上げを伸ばすなど、ワイナリーも高級路線か、カジュアル路線かなど、マーケティングでしのぎを削っているという。ニュージーランドワインは、高級ワインもほとんどがコルクではなくスクリューキャップである。反発も多かったそうだが、実際は機能的に大差ないのでいまではスクリューキャップが受け入れられつつあるという。
ワインの味わいは繊細であり、空気に触れると香りも味も変わるので、注がれたワインをグラスの中でまわしただけで味わいが変わってしまうという。そう読むと本当か?と思ってしまうが、当方もやはりちゃんとしたレストランで飲んだ時、私かにワイングラスから流れえてくる芳醇な香りと、時間が経つにつれて変化する風味と香りに驚かされた記憶がある。ワインの奥深さをそのとき知ったのかもしれない。
本書はワインの歴史・ワインの産地別の性格からボトルの形からワイングラスのかたちという小さいトピックまでバランスよく扱っており、なんともバランスがいい。ワイン入門書の名所である。
