この前、「クリムト展」にいってきた。GW中なので混雑しており、チケット購入と入場に15~20分程度かかったし、中は大混雑。オンラインチケットをおすすめするのと、GW中に行くなら入場直後か閉館ギリギリに行くことをおすすめする。
個人的にはあまり中世には興味が無く、18世紀以降、特に19世紀~20世紀の歴史が好きである。まさにクリムトはまさにその時代を生きたオーストリアの画家である。世紀末、落日のハプスブルクの帝都ウィーンは、その政治・経済的な没落とは裏腹に文化・科学が爛熟した。ベルク・シェーンベルク・ウェーベルンは調性の否定により新ウィーン学派を生み出し、シュレディンガーにより量子力学の基礎が築かれ、絵画の世界においてはウィーン分離派が新しい芸術のあり方を見出したのだ。そのウィーン分離派を生み出したのが、クリムトなのである。クリムトは、ウィーンで万博があった際に日本の美術に触れており、日本の美術品などもコレクションしていたようだ。そもそも官能的な作品は、日本の春画の影響があるという。大胆な構図や画面の平面性は浮世絵、金箔の多用は琳派の影響であろうし、市松模様のようなデザイン等にも日本美術からの影響を観ることが出来る。ウィーン分離派の活動期間は短いが、現代美術への先鞭をつけたのだった。
展示作品で良かったのはクリムトの「ユディトⅠ」である。当時の流行のテーマだったファム・ファタールをメインテーマに、聖書のモチーフを官能的に描いており見事だった。「オイゲニア・プリマフェージの肖像」も素晴らしかった。鮮やかな色彩の中に女性を描いた肖像画であるが、色彩の洪水に思わず見惚れてしまう。鮮やかな黄色が、脳裏に焼き付く。また、ベートーヴェンの第九をモチーフにした「ベートーヴェン・フリーズ」の壁画の複製展示されていたが、実寸大なので見応えがある。クリムトは雅な色彩が特徴であるが、「女の三世代」では暗い色彩で、女性を被写体に、幼年から老年の変化を描いている。世紀末ウィーンにおける文化の爛熟と、その後の、西洋の没落・世界大戦という不穏な時代が、絵画にあらわれているように感じられた。
実は、国立新美術館のほうでも、「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」を開催しているので、観に行ってみようかと思う。GW中は混雑が酷そうなので、また今後行こうと思う。