国民民主党と衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」は17日、政府の法曹養成制度改革関連法案への対案を衆院に共同提出した。司法試験で口述試験を復活させるほか、受験資格を得るための予備試験を廃止することが柱。立憲民主党など他の野党に協力を呼び掛けている。-- 時事ドットコム
司法試験の受験要件が廃止され、旧司法試験に戻すように国会議員がいよいよ動き始めたようです。というのも、2019年の司法試験志願者数は4,930人(昨年5,811人)というありさまで、もはやピーク時の約1割にまで志願者数が激減しており、制度維持が困難になってきているのです。このうち9割の4400人が受験したとして、昨年の合格率を維持した場合、合格者数は1100人程で、政府目標を大きく下回ります。合格者数を維持した場合、合格率34%となり、3人に1人以上が合格できることになりますが、もはやここまで来たら合格者の質は確保できないでしょう。とはいえ、海外は8~9割が合格する司法試験で別に司法が維持されているわけですから、司法試験がそこまでの難関である必要性があるかは謎です。
現在、法務系を目指して転職活動中の当方ですが、エージェントさん曰く、法務・知財関係はどこも人手不足らしいです。私も前いた会社の法務部が人手不足みたいで「戻ってこない?その件でランチどう?飲みでもいいよ!」と法務部と営業部の方から連絡ありました(戻る気はいまのところ無いですが)。特にグローバル化により、英語案件は増加しているのに、英語ができる法務系人員はほとんどいないので、人材の取り合いになっているようです(おかげで私みたいなハンパ者でも、企業法務経験有りで英語もできるということで採用面接に呼んでいただけるわけですが)。しかし、弁護士の貧困化と法科大学院の崩壊により、優秀層は法務を目指さないという悲劇的状況で、天下の東大法や、東大の赤門、中央の白門と謳われた中央法も偏差値が落ちているようです。
法科大学院修了生は司法試験に合格していなくても、法務系就職で強いかというとそうでもないようで、ロー卒で司法浪人経験者は27~29歳ぐらいもザラですが、結局のところは職歴無しで、かつ青春をほとんど勉強に捧げたので社会経験等に乏しく、また法曹を目指していたというプライドと司法試験に失敗したという挫折感で、屈折した感じの人が多くて使いにくいという声をよく聞きます(実際、あまり大きな声では言いませんが、前の職場にいたロー卒・司法試験2振の方は、付き合いにくかった・・・)。前の職場にいたとき、ロー卒(司法試験はパスしてない)の採用面接を何件かやった法務部員と話しましたが、「覇気がない」、「アピールポイントが無さ過ぎてとても役員面談には・・・」、「司法試験落ちたのは分かるけど、この年齢で職歴無しでいまも何もしてないってすごいよね・・・」という感想を漏らしていました。もちろん、コミュ力とかはその人次第なのでなんともえいえませんし、法科大学院修了生をターゲットにした募集も多いので一概には言えませんが。
一方で、IT系法務の業界団体の集まりに出席していた時に他の企業法務部の人が嘆いていたのですが、弁護士資格を持つ人を雇っても、企業法務は意外と地味で、契約書のチェックや簡単な法律事案ばかりで経験を積めないので、すぐ辞めてしまうそうです。そういえば私の以前勤めていた会社も2人弁護士がいましたが、1人は独立し、もう1人は法律事務所に転職していました。企業は法曹有資格者が欲しいが、法曹資格保持者からすると企業法務は刺激が足りないというミスマッチが起きているのかもしれません。日本の司法試験は、頑張っても落ちる場合が多いコストがかかる難関資格である一方、プラチナ資格というには合格者数が多過ぎて飽和状態という宙ぶらりんの状態なわけです。
社会人の当方も実のこと法曹に再度興味は持ち始めたのですが、いまから法科大学院に行く気はゼロです。だったら、ほぼ確実に法曹資格が得られる米国のロースクールの方が興味ありますし、ダメもとでコストがかからない予備試験を頑張ろうかとすら思います。個人的には眞子さまの恋人の小室圭さんが、米国ロースクールに留学したのは、戦略的には正しいと思います。英語が苦ではないなら、米国の法曹資格の方が遥かに取得しやすいし、日本では価値もあるからです(英語できる法務人材は深刻な人手不足ですから)。
要は日本の法科大学院は、教育投資の回収確率が低すぎるんです。多様な人材を法曹にという理念とは裏腹に、法科大学院が参入障壁と化している。政府が法科大学院制度に固執するなら法科大学院修了生の司法試験合格率を7~8割ぐらいにしないと学生は集まらないでしょう。現実問題、それは不可能ですから、結局、優秀な学生ほど法科大学院は目指さなくなり、法科大学院制度は維持が出来ない。そうなると、司法試験を受験する人がいなくなってしまうので、受験資格を緩和しないといけなくなる。国会議員も動き始めたので、数年以内に制度改定があるのではないかと思われます。個人的には、旧司法試験の制度に戻して、合格者数だけ増やすというかたちに落ち着くのではないかと踏んでいます。
