毎年恒例の「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」に行ってきた。「ラ・フォル・ジュルネ」はフランス発の音楽祭で、無料演奏をやっていたり、一流の音楽家の演奏コンサートが気軽に聴ける。GWに3日間連続開催で、講演会やプロのピアニストの公開レッスンなどもある。今年もメインは有楽町~丸の内で開催だったが、今年は池袋会場も追加された。池袋~有楽町は、30分ほどかかるが、地下鉄で一本。とりあえず、初日は予定があったので行かなかったが、2・3日目に行ってきた。ちなみに、今年のテーマは「モンドヌーヴォー」(新しき世界へ)である。
 
【拝聴したマスタークラス】(※プロのピアニストの公開レッスン)
・アンドレイ・コロベイニコフ氏による、太田 糸音さんへのレッスン。
曲目はベッリーニ=リスト「ノルマの回想」(S.394)。ベッリーニ作曲のオペラ「ノルマ」の主題による曲。タールベルク奏法がふんだんに組み込まれた難曲。コロベイニコフさんは、非常に博識で、曲の解説がとても分かりやすい。無学なものでオペラ「ノルマ」を観たことがないので、説明の理解が追い付かなかった(今年は暇があればオペラの方にも手を出したい)。それにしても、気になったのがアンドレイ・コロベイニコフさんの経歴。スクリャービン国際ピアノコンクール優勝等、有力コンクールでの入賞歴があるが、12歳でEuropean Law Universityに入学し、17歳で成績優秀で卒業し、司法試験にも合格。英・露・伊に加えてエスペラント語も話し、モスクワ大学院で民法の研究もしているそう。天才児が成長するやはり天才のままなのかと感心。
 
・アンヌ・ケフェレック氏による、坂本リサさん・坂本彩さんへの連弾曲のレッスン。
シューベルト作曲「ロンド イ長調」(D951)。初めて聴いた曲だが、曲自体もなんとも美しいし、二名の演奏が瑞々しくとても見事だった。姉妹らしく息がぴったりでタッチも似ているので、一人で弾いているかのような安定性。シューベルトらしく歌曲のような旋律が春の小川のように流れていく。ケフェレックさんも非常に褒めていたが、氏曰く死の直前の曲なので、華麗な中に、死の影を感じさせられたらなお良いという指摘が興味深かった。ケフェレック氏のコンサートに行きたかったが、残念なことに売り切れで聴けず・・・。
 
【講演会】
・「パリに生きたショパン」:小坂裕子(ショパン研究家)
⇒ ショパン研究家によるショパンの概説。譜例を示しつつ、マズルカやポロネーズをメインに説明していた。マズルカはポーランドへの郷愁であり、一方でポロネーズはポーランド勝利への鼓舞だという。
 
・「亡命作曲家がハリウッドにもたらしたもの〜『キング・コング』から『スター・ウォーズ』まで」:前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)
⇒ 時間があったので、聴いたのだが、かなり面白かった。世界大戦で米国に逃れた作曲家が、ハリウッド音楽に与えた影響をスタイナー、ワックスマン、ローザの3名を軸に解説していた。スタイナーに関しては名付け親がリヒャルト・シュトラウス、ブラームスにピアノを教わり、音楽院でマーラーに師事したというエリートだった。そんな彼が、手がけたのが「キング・コング」で、この作品がハリウッドで初めてフルオーケストラで録音された映画音楽らしい。非常に勉強になった。前島さんはトークも上手。
 
【コンサート】
・ショパン作曲「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」及び「ピアノ協奏曲第2番」。演奏はエル=バシャ氏。
-- エル=バシャ氏は、アラブ系のレバノン人だが、フランス在住。巨匠アラウに認められ、最も歴史と権威あるコンクールの1つのエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝している。氏の演奏には非常に感銘を受けた。左手はシルクのように滑らかで、右手は真珠のような煌びやかな主旋律を奏でる。とても詩情豊かで、どこまでいっても自然体。誠に素晴らしい演奏だった。ただ5000人収容のホールの2階席のさらに後ろだったので、低音部が会場に吸収されてしまい聴こえない・・・(前の記事を見返したら、去年も同じことを言ってた)。来年こそ大ホールは前の方で聴こうと思う。
 
・ショパン作曲「夜想曲第7番」(op27-1)、シューマン「幻想曲」(op.17)、「8つのノヴェレッテ 第8番」。演奏はクレール・デゼール氏。
-- シューマンはあまり聴かないのだが、今回ちゃんと聴けて良かった。デゼール氏はパリ音楽院・チャイコフスキー音楽院で学び、母校で後進の指導にあたっているらしい。CDでのレコーディング歴もある。体全体を使いピアノを鳴らすのはロシアで体得した重量奏法だろう。音は濃密で、油絵のよう。説得力ある演奏だった。シューマンは晩年に精神を病み亡くなったが、多作の時期と寡作の時期が繰り返されており、双極性障害だったと言われている。曲も突然激情的になったり、気難しい。
 
・武満徹作曲「ロマンス、遮られない休息、フォー・アウェイ、閉じた眼、雨の樹 素描、閉じた眼Ⅱ、ゴールデン・スランバー」。演奏は北村朋幹氏。
-- こちらは聴こうか悩んでチケットは買ってなかったが、当日券があったので勢いで購入。武満氏の曲は、有名な「ノヴェンバー・ステップス」ぐらいしか知らなかったが、結果、聴いてとても良かった。武満徹は日本を代表する現代・前衛作曲家である。ホールは演出上、ピアニストを上から照らすライト1つのみ。その暗闇の中で、協和音と不協和音が織りなす、何とも言えない不思議な音響の世界。残響自体が曲の一部を構成しているようで、何とも不思議な音楽体験だった。演奏者の北村氏は「題名のない音楽会」等に出演しており知っていたが、リーズ国際ピアノコンクール第5位などの有力コンクールで入賞する実力者になっていた。自身の音楽性を探究しており、内省的な良い演奏家になりそうな気がする。
 
あと、島村楽器のブースでの無料コンサートで演奏していた永井希望氏のラフマニノフ作曲「コレルリの主題による変奏曲」は見事だった。全日本学生音楽コンクール全国大会第2位入賞、芸大附属高在学中。真摯に曲に向き合っており、とても高校生には思えない成熟した演奏だったと思う。演奏後に佇む姿は、不思議な話だが、まるで教会で祈りを捧げ終わったような趣だった。
 
以下、写真。
 
東京国際フォーラム。バルーンもあってなんかインスタ映え。

 

屋台も多く出ているが、安くてボリュームも多い。写真は「俺のフレンチ」のフォアグラロッシーニ・バーガー。
結構ボリュームあるが1000円だった。安い。

 

無料コンサート。お酒を飲みながら聴けるのが良い。

 

有料コンサートのチケットがあると入れるエリアにある島村楽器のブースで、ドイツの名器ザウターを試弾。高音部がとても綺麗。

 

合唱団の無料コンサート。

 

なぜかアルファロメオのブースがあった。車のステレオシステムを兼ねた宣伝らしい。アルファロメオのジュリエッタは格好いい。