いつもはAmazonプライムで観てしまうのだが、久々に劇場で映画を鑑賞。シネマート新宿で初めて観たが、傾斜が無い割に結構観やすかった。本日公開の韓国映画「タクシー運転手 約束は海を越えて」である。これは、1980年、日本にいたドイツ人記者が、全斗煥大統領の軍事政権のもと戒厳令下の光州にタクシーで潜入し、唯一、「光州事件」を世界に報道した実話がベースである。彼がいなければこの事件は闇に葬られていただろう。盧泰愚大統領が民主化宣言を行う1987年まで韓国は軍事政権だった。つい30年ほど前のことである。

 

主演はソンガンホ。韓国を代表する名優だが、本作でも良い味を出している。光州事件を扱っているのに映画のポスターがやたら明るいと思ったが、たしかに前半はソンガンホのコミカルな演技が光る。一方で、後半では、光州で起きている惨事に目が覚め、そのドイツ人記者をまた再びソウルに送り届けるべく奮闘するシリアスな演技を見せている。やはり名優だけあって観ていて安心感がある。

 

映画のレヴューを読んでも、絶賛しているものが多いが、たしかに良い作品だが、映画としては惜しいところも散見される。まず、音楽が過剰だ。後半でストーリーの転換点で、非常に切迫した感じのヴァイオリンの芸術的な音楽が流れるが、やはり映画の雰囲気からすると若干浮いてる。それに、十分にシーンだけで感動できるところで、やたら感情を煽る音楽を流すが逆効果。さらに、ソンガンホの演技は良いが、さすがに光州入ってからもちょっと呑気過ぎる。あと、タクシーのカーチェイスのシーンだが(とっても感動的なシーンなのだが)、もっと主人公のタクシーはスピード出せよとイライラしてしまった。これは配給会社の問題だが、副題は余計だと思う。

 

とはいえ、前半は劇場のあちこちで笑い声が聞えたが、後半では衝撃的なシーンに涙する人が多かった。観ている人が素直に反応できる映画というのは良い映画ということだ。光州事件の報道に隠されたことを知らしめる良作で、報道の重要性を非常に感じさせられる作品で、多くの人に観てもらいたい。

 

最後のインタヴューで知ったが、ドイツ人記者はその後、タクシー運転手には再開できなかったそうだ。不思議な歴史の一幕を観れて良かった。

 

★3.8 / 5.0