先日、久しぶりに上野に行ってきた。そこで、「ボストン美術館の至宝展」「タイ〜仏の国の輝き〜」を観てきた。タイの方は完全におまけでいったのだが、ついでに観に行ったほうが良かったりすることが多いが、今回もそのパターンだった笑(もちろんボストン展もすごい良かった)。
 
◆ボストン美術館の至宝展
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ボストン美術館は、アメリカのボストンにあり、有志によって1876年に開館した美術館である。そちらから80点が展示されている。アメリカの美術館であるがコレクションは古今東西を問わず、今回の美術展でも西洋絵画はもちろん古代アフリカ、中国美術、日本美術、版画・写真、現代アートまで展示されている。岡倉天心が勤めていたこともあり、日本美術の傑作も多く所蔵しているらしい。
 
見どころは多く、広告にも使用されているゴッホ「ルーラン夫婦」は見事な作品である。個人的に好きなモネの「ルーアン大聖堂、正面」を観れて良かった。もはや被写体自体の存在は重要ではなく、被写体が反射する光の揺れ動きの描写に注力し、モネの網膜に映った大聖堂のイメージを絵画にとどめることに成功している。
 
アメリカ絵画も展示されていたが、あまり観る機会がなかったので興味深かった。アメリカはイギリスの植民地だったので、やはり欧州の影響を受け最初はアカデミックな写実的絵画などをベースに絵画史がスタートしている。ただ米国絵画の初期の作品は技術的にまだ成熟しておらず単調な印象を受けた。一方でやはり米国で流行した英国画家サージェントの作品はあまりにも見事だった。華麗な雰囲気で、肖像画ではあるが構図もよく練られている。時代は現代になるが米国のチャールズ・シーラーの作品の作品は初めて観たが、工業的モチーフをやや抽象化しながらも写実的に描いており面白かったが、プレシジョニズムというらしい(これは勉強になった)。
 
日本美術だと(ボストン美術館の日本美術を日本で観るというのも不思議な感じがするが)、英一蝶の巨大な「涅槃図」は経年劣化のため長らく非公開だったが今回修復を終え、ついに里帰りとなった。涅槃に入る釈迦を描いた傑作であるが、その存在感には畏怖の念すら覚える。
 
現代美術だとケヒンデ・ワイリーの作品が見事だった。写実的な肖像画であるのに、それを飾るのはポップで華麗な装飾。彼の作品のモデルは黒人であるが、やや彼の肖像画に違和感を覚えるのは、肖像画が西洋で確立したもので、我々の中にある既存の肖像画概念と相反するかだろう。目の前にある肖像画から得られる感慨と、感じる違和感との混交は、実際に肖像画と対峙してみないと分からない。これが生でアートを観る楽しみの一つである。
 
◆タイ〜仏の国の輝き〜
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タイ王国の仏教美術の展覧会が東京国立博物館で開催されている(日泰修好130周年らしい)。この前、夏休みでタイに行ったので、やや懐かしく観てきた。モン族のドヴァーラバティ王国時代のものから、現代にいたるまでの仏教美術が展示されている。タイはいまでも国民のほとんどが仏教徒であるが、紀元前から仏教を熱心に信奉し、それが現代まで続いているのだとは知らなかった。
 
次の画像は、寺院ワット・スタットの大扉である(ここだけは撮影可)。現王朝であるラタナコーシン朝のラーマ2世がつくらせた傑作である。あまりにも精緻で重層的かつ複雑につくられている。他に同じものをつくらせないようにこの扉を作成した器具はすべて捨てさせたらしく、タイの名品中の名品である。
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本展示会で、自分の守護仏が分かるコーナーがあったのが面白かった。タイでは皆自分の生まれた曜日を知っているという。曜日によって守護仏が違うかららしい。私の守護仏は、鉢を手に持って托鉢している仏様。曜日の色は緑色。このサイトでも調べられる:こちら。仏教徒ではないので、あまり信じていないが、占いみたいで面白い。
 
どうでもいいが、このタイ展を出た出口あたりで、年配の方が「日本以外は植民地になって大変だった、日本はアジアで独立を守った唯一の国ですごい」などと話していた。しかし、これは明らかな勘違いである。タイは欧米の植民地になどなっていない。これはラーマ4世が、トンブリー王朝以来の清王朝への朝貢をやめて冊封体制から脱し、イギリスと通商を結び、ラーマ5世がチャクリー改革という近代化改革を推し進め、欧米とうまく外交の駆け引きを行ったためだ。だからこそタイの現王朝のラタナコーシン朝は国民の信頼が厚い。
 
日本は学校教育でアジアの歴史をあまりやらないが、西洋中心主義の世界史をそろそろ脱却すべきだと思う。(私も含め)日本人はアジアについて無知過ぎる。日本だと日本賞賛番組が多いが、もはや日本は特筆すべき国ではない。日本の人権問題やジェンダー問題など後進的な側面も議論されるべきだ。会社の人と話しても、日本人は日本以外のアジア全てが後進国だと思っている傾向が強いが、アジアの成長は著しい。GDPでは日本は中国の半分以下で、一人当たり所得でみると、日本はシンガポール・香港の後塵を拝し、韓国にも追いつかれつつある。都市ランキングでも、シンガポール・ソウル・香港が東京を猛追しており、さらに上海・北京なども上位に浮上している。この都市競争にジャカルタ・クアラルンプール・バンコクなどの都市が加わってくるのは時間の問題だろう。日本の地方の大都市といえど、アジアの大都市のほうが遥かに先進的だ。極東の田舎の島国に成り下がる前に意識改革が必要であろう。