東京・23区内の大学新設抑制要望 小池百合子知事が反対表明 全国知事会
27日に盛岡市で開かれた全国知事会で、東京一極集中是正に向け、東京23区の大学・学部の新増設抑制や地方大学への財政支援強化を国に求める決議に関する議論で、小池百合子知事は「学ぶ場所の自由を奪う」と述べ反対を表明した。

この日、小池氏は議論の中で「東京対地方という構図ではなく、共存共栄して日本全体の創生を目指すべき。そのうえで(大学の)場所ではない。ハーバード大やMIT(マサチューセッツ工科大)はどこにありますか。場所ではなく何をどう教えていくのがポイントだ」と反対を表明。川勝平太・静岡県知事らも同調した。--
産経

 

<地方大学>活性化に交付金、政府方針 東京集中解消狙い

政府は、地方の大学の活性化を図る新たな交付金を創設する方針を固めた。自治体が地元の大学や経済界と連携して展開する地域振興の取り組みを支援する形で、2019年度から百数十億円規模の交付金の支給を目指す。地方大学の教育・研究環境の底上げを図るとともに、東京に集中する私立大学などの地方移転も促し、大学生の「東京一極集中」を解消する狙いだ。-- 毎日新聞

 

最近は大学の東京一極集中のニュースが多い。たしかに大学で上京する学生はとても多い。大学の志願者数ランキングだと、トップ15校中10校は東京の大学である。それゆえに東京の大学の定員規制を求めることが多い。しかし、大学で上京を規制したところで、就職で上京するので意味はない。地方に魅力がないのが原因で、東京の大学に定員規制を求めるのは筋違いで、東京の大学をいじめても、地方の大学が良くなるわけではない。特に私立大は経営の自由があるのだから、もし規制したいなら東京の国立大をすべて地方に移転すればいい。

 

小池氏は東京の大学の定員規制に反対らしい。それはいいのだが、「ハーバードやMITはどこにありますか」という発言が気になる。ハーバードやMITは田舎にあるが、世界でもトップクラスで人気が高いのだから、地方の大学が人気ないのを立地のせいにしてはいけないということだろうか。日本の大学に関する論評を読むと、こうしたアメリカの名門大学は田舎にあるという意見があるが、そうなのだろうか。ハーバードやMITは、ボストンにあるが、ボストンは森財団の「世界の都市総合力ランキング」で第27位であり、都市圏人口は500万の世界でも有数の大都市である。ボストンは、他にもタフツ大・ボストン大などの名門大を要する学園都市としての性格も持つ。

 

大陸国は平地が多いので田舎にあるようにみえるだけでほとんどが大都市内かその近郊にある。ノーベル賞輩出数世界2位のコロンビア大や名門ニューヨーク大はNY・マンハッタンにあり、ーベル賞輩出数世界4位のシカゴ大はアメリカ三大都市シカゴ市内、アイビーリーグのペンシルバニア大は大都市フィラデルフィア市内、大統領を多数輩出するジョージタウン大はワシントンD.C.、西部の名門UCLA・南カリフォルニア大はロサンゼルス、南部の名門ライス大はヒューストンなど大都市立地の大学も非常に多い。ヨーロッパをみても、欧州の有力大は、主要都市の市内かその近郊にある。アジアの一流大をみても、ほとんどが主要都市の市内かその近郊である。海外の名門大は田舎にある説は眉唾である。大都市という立地は情報へのアクセスの容易さ、多種多様な価値観への接触、人脈形成、卒業後のキャリアなど様々な点で恵まれている。

 

もちろん、名門大学が田舎にある場合もある。しかし、歴史的沿革をみる必要がある。例えば、アメリカのハーバードに並ぶ名門イェールは、結構な田舎にあるが、これはハーバードが俗世によって堕落したのでキリスト教の純化のためにあえて田舎につくったのだ(イェールも英国国教会によって汚染されたとする長老派はプリンストンを田舎につくった)。もちろん、こうした活動の主はインテリ層なわけで、故にイェールやプリンストンは田舎でも洗練されている。

 

日本の人・金・物・情報すべてが東京に集まっている。地方は圧倒的劣位にあり、これを変えなければ、地の利で地方の大学は東京の大学にかなわない。結局、それがそのエリアにある大学の人気・レベルにも直結する。大学の人気は、その都市の強さの従属変数であって、大学の定員をどうこうしたところで、その都市に若者が居つくようにはならない。東京一極集中が良いとは思わないが、地方の大学を良くするのに東京の大学定員抑制は何の効果もない。優秀でやる気のある若者を、チャンスのない田舎に幽閉して死蔵することは国家的な損失でしかない。