クリスマスではあるが、特に予定もないので、早稲田松竹で映画鑑賞。1300円で二本立ての名画座である。学生時代もよく通っていたが、社会人になってもたまに来ている。クリスマスのロマンチックな雰囲気とは裏腹に、重い歴史問題を扱った2作品の上映だった。

 

ヒトラーは現代ドイツではタブー化されているが、これをなんとコメディ化した問題作である。原作小説はドイツでベストセラーだった。公園にヒトラーがタイムスリップし、おもしろおかしくストーリーが進んでいく。メルケルを「ド迫力のデブ女」といって現代ドイツ政治を罵るシーンや、「ヒトラー最後の12日間」等のパロディはかなり笑える。ただ、前半のコメディの雰囲気とは裏腹に、後半は背筋が寒くなった。現代だったらヒトラーはこうして大衆の人気を得るのかと、映画を観ながら蘇ったヒトラーの発言に感心していた自身にぞっとした。彼は作中、必要なら道化とも化すと言っていたが、頭の中では着々と大衆扇動の計画が練られている。現代ドイツは移民との軋轢の問題を抱え、出生率の低下に苦しむ。これらは大衆扇動の材料で、ヒトラーを生み出す土壌なのだ。映画で認知症の老婆がヒトラーをみて、大勢一族をお前に殺されたんだと激怒するシーンがあるが、作中のコミカルなヒトラーと、歴史上の残虐なヒトラーのイメージが脳内を交錯する。本作は思考実験的な作品なのだ。ヒトラーは現代のいつどこにでも蘇る可能性がある。現在、欧州ではイスラムフォビアがはびこっている。ブラックユーモアに見せた、現代への警鐘映画である。ただ監督の腕が悪いのか、B級臭がぬぐえない。前半はテンポ良くもっとコミカルにして、ラストで一気に暗転させるぐらいがちょうど良かった。これだとコミカルなヒトラーを題材にした単なるフィクションにも見えてしまう。

 

「ローマの休日」は誰もが知っている名作である。これを書いたのは誰かご存じだろうか?これを書いたのはダルトン・トランボ。これが本作の主人公である。彼は共産主義者でもあった。そのため、マッカーシズムが吹き荒れ「赤狩り」がされた1940~50年時代にハリウッドを追われてしまい、刑務所に服役もする。ダルトンを含むハリウッドを追われた10人を「ハリウッド・テン」という。しかし、彼は生活のために偽名を使って作品を発表し、その結果、彼は偽名でオスカーやアカデミー賞を受賞するのだった。それが明かされるのは1970年代になってからだ。彼を支えた家族との葛藤や、自由の国アメリカの、言論や思想の自由が制限されていた時代を上手く描いている。出演者は演技派を揃えており、映画のクオリティは、かなり高い。最近、アメリカは自己反省的な作品が多いが、これはアメリカの社会経済の停滞による自信喪失の表れだろうか ― いや、アメリカは思慮深くなったのだと思いたい。