仕事終わりに、山本貴志のピアノコンサートに行ってきた。山本貴志は、長野県出身で、桐朋女子高等学校音楽科を首席卒業(女子高等学校だが共学である)、ショパン音楽アカデミーを首席卒業、ザイラー国際ピアノコンクール優勝、ショパン国際ピアノコンクール第4位入賞の実力者である。今年は5年に1度のショパンコンクール開催年(ショパンイヤー)ということで、オールショパンプログラム。実は山本氏が入賞したのは10年前である。その回のガラコンサートに行ったが、それから10年経つと思うと、年月が経つのは早い。ガラコンサートでは山本氏はコンチェルトの1番を弾いていたが、今回はソロコンサートである。CD等の音源で聴くと気が付かないが、山本氏は演奏中、結構息づかいが荒い。あと、ペダルを弾く際に、かかとを上げるのが特徴である。ただそのせいで激しい部分だとペダリングの音が、ドスンッと聞こえる - ただぺダリングは荒いがその結果生じる演奏は決して乱れがない。G.グールドは演奏中にうなることで有名であるが、山本氏もそのタイプらしい。おそらくかなり曲に入りこんで、物思いにふけるタイプの演奏家だと感じた。感銘を受けたのが、最後の音が儚く消えゆくのをしっかりと聞き届ける姿勢である;本当に最後の音が非常に美しい。ちなみに、アンコール曲の前に、マイクを持って話を始めて驚いた。ポーランドの小さな村で演奏した時の村人の笑顔が忘れられず、ポーランドに移住したらしい。それにしても、しゃべり方も非常に優しく、物腰柔らかな印象を受けたが、演奏にもそれが表れているように感じられた。
演奏も素晴らしかったが、会場も良かった。会場は東京文化会館(上野)・小ホールである。前川國男の代表作である。なんとなく会議場にも思える会場だったが、昔は会議場としても使える施設だったらしい。1961年竣工で高度成長期には、クラシック音楽演奏の聖地であった場所である。小ホールはコンクリート打ちっぱなしだが、間接照明などがどこか厳かさがあり、なんとなく教会のイメージを受けた-聖カテドラル教会のような。
非常に良い演奏会だった。今後も仕事帰りにコンサート等に行けたら良いリフレッシュになると思う。あと、どうでもいいが、草月流・華道家の假屋崎省吾がコンサートを聴きに来ていた。そういえば、假屋崎さん、趣味がピアノだったな。

