第69回ヴェネツィア映画祭金獅子賞受賞作である。キム・ギドク監督作品である。ちなみに、「ピエタ」とは、亡きキリストを抱く、聖母マリアの像や絵画のことをいう。ミケランジェロの作品が有名だが、サン・ピエトロ大聖堂にある(以前イタリアにいった時に観たが見事な彫刻だった)。


本作品の主人公は借金取りで、金を回収するためには手段を択ばない残酷な人物である。そこに、母親を名乗る女性が現れるというストーリー。カンが鋭い人であれば途中で結末が分かってしまうが、しかし映画の終わり方はさすがに想像できないだろう。韓国には「恨(ハン)の文化」というものがある。これは長らく異民族に虐げられた歴史や、両班などの支配階級に抑圧された民衆の不満などの鬱積した感情が蓄積されて成立した文化である。恨とは、伝統規範からみて責任を他者に押し付けられない状況のもとで、階層型秩序で下位に置かれた不満の累積とその解消願望だという。韓国映画ではこうした恨みに基づく「復讐劇」がテーマになることは少なくない - 「オールドボーイ」や「親切なクムジャさん」等。


本作は徹底的に「恨」が息づいている。映画に出てくるすべての人が恨を原動力にして、復讐のために行動している。韓国映画の興味深いところは、歴史的に成立した悲観的な思考または感情的な思考と、キリスト教的な思想が混在していることである。韓国でキリスト教が根付いたのは、韓国の歴史を見れば不思議ではない。最後の主人公の行動のところでBGMでかかっている曲をよくきくと「Kyrie eleison(主よ 憐れみたまえ)」という歌詞が聴こえる。冒頭とラストのキリスト教的な暗示はなんだろう。途中で登場する謎の母親は、自身の復習に自信を持ちつつも、最終的には主人公への同情心が拭えない。主人公も極悪非道な行為を行ってきたが、謎の母親との出会いで改心する。しかし、そうした人間は思い悩み迷う。もはや神の恩寵にすがるしかないのか。韓国の恨の文化と、人間の愚かさ(それゆえに神の救済を必要とする)を描いた作品といえよう。韓国文化を深く理解した人にはオススメ。