前回の記事で質問をもらった。因果関係相関性についてである。それらは似ているようで異なる概念である。実証研究でこれらの識別で苦労する。相関性とは、2つの変数の関係性をいい、例えばある変数が高い場合に、もう一方も高い場合、それらは正の相関があるという。例えば、基本的に身長が高いほど体重も重くなるので、身長と体重は正の相関があるという。他にも、学歴が高くなるほど平均年収も高くなるので、学歴と所得は正の相関性がある。逆に一方の値が高い時に、一方の値が低いと負の相関があるという。例えば、ある国の所得が高いと、犯罪率は低い傾向があるので、所得と犯罪率は負の相関にあるという。では因果関係とどう違うのだろう。因果関係とは二つの変数に原因と結果の関係がある場合に、因果関係があるという。例えば、気温が高い国ほど冷房機が売れるという場合、気温が原因で冷房機が結果というのは明確である。



注意が必要なのは、相関関係があるからといって因果関係があることにはならない点である。例えば、アイスの販売量と、水難事故の件数は正の相関性がある。では、アイスがたくさん売れたから、水難事故が増えたのだろうか。これはNOである。単に気温が高いとアイスを買う人も増えるし、海に行く人も増えるので、それらの値に相関が生じるにすぎない(疑似相関とか見せかけの相関というーちなみに、2次偏相関をとったりすると疑似相関は見抜けることがある。)。この場合、両者には相関性はあるが、アイスの販売量と水難事故件数とは因果関係はないということになる。



社会科学の困難なところは、関係している要因が多過ぎ、また変数が時々変化するので、偶然そうなったのか、サンプルに問題があるのか、本当に因果関係があるのかの識別がつきにくいところである。例えばニューヨーク州ではジュリアーニ市長のゼロトレランスによる厳しい取り締まりの結果として犯罪が減ったと考えられていた。しかし、レビットとドーヒュー教授によれば、それは間違いだという。1973年に中絶が合法化され、未婚の母やドラッグ中毒の女性が中絶した結果、犯罪者になりやすい社会集団の子供が減り、だから、犯罪が減ったのだという。実際、警察改革の行われなかった州でも犯罪は減っているし、州別の中絶率と犯罪率の減少率は正の相関があった。重回帰分析(固定効果モデル)でも、統計的に有意に出たのは中絶率だけであり、アルコール消費量だとかの諸変数は有意にならなかったのである。


【参考】

ヤバい経済学 [増補改訂版]/スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー

統計学が最強の学問である/西内 啓