ゲーテはIQ 210、レオナルド・ダ・ヴィンチはIQ 205 ...etc...。ネットで検索すると、歴史上の人物のIQが出てくるが、これはどのように計算しているのだろう。彼らの時代にIQは存在しない。最初のIQテストがつくられたのは、1905年のフランス。義務教育が施行されたのはいいが、各学校に授業についていけない児童が一定数いることが判明したため、知的な問題のある児童を識別するためにIQテストが開発された。これが有名なビネー式IQテストである。では、それ以前の人のIQをどのように測定しているのだろう。これは単純な話で、現代的なIQは偏差IQで、知能は100を平均として正規分布していると仮定されている。IQ 100以上の人は、2人に1人という計算になるし、IQ 130以上なら50人に1人(標準偏差15の場合)となる。そこで、ゲーテは当時のドイツで最も賢いと仮定して、当時のドイツは2000万人なので、2000万人に1人のIQを逆算して求めているのだ。しかし、これはおかしな話で、たしかにゲーテは偉大な小説も書いているし、偉大な思想家だが、現代的なIQテストで必ずしもハイスコアをとれるかといえば疑問が残るし、当時のドイツで最も賢いというのも仮定に過ぎない。アインシュタインはIQ 160と俗っぽくいわれるが、彼は5歳まで言葉を話さなかったことからも、言語は不得意だったようである。おそらく、WAISのように様々な知能群から全検査IQを算出するIQテストでは、言語性の項目が足を引っ張り、IQ 160というスコアは出ないのではないかと思われる。なんにせよ、IQとは、IQテストによってはかられる数値なので、測ってみないと分からない。


あと、現代的なIQテストでは、200は出ないと言われることがあるが、これも論拠がある。なぜなら、標準偏差15の場合、IQ 200以上というと、数百億人~数千億人に1人という数値になり、地球人口を越してしまうのである;かつての比率IQではIQ 200はありえたが。ちなみに、日本のWAIS Ⅲだと、IQは最大でも156までしか測れないので、それ以上のスコアでも、156以上と表示される。ちなみに、IQ 156は、1000人に1人の出現率である。19歳で修士をとり、26歳で博士号を取得、同年スタンフォード大助教授になったライス元国務長官は、IQ 180とか言われるが、実際はIQ 136である。「コンドリーザ・ライス自伝」で6歳の時のIQテストの結果を明かしている。両親は少しがっかりしたようだったと書いているが、彼女が聡明なことには変わりがないし、IQ 136でも十分に高い数値である。IQ 200以上というのは「ずば抜けて優秀」という意味合いで使用されるが、統計学的にみるとおかしいのである。


ちなみに、よくテレビで「某高知能団体はIQ 148以上の人が入れる!」というように紹介されるが、これは標準偏差24の場合の数値である。IQ 148(標準偏差24)は、標準偏差15だとIQ 130となる。数値が高い方が良く見えるので、標準偏差24の方を用いているのである。テレビでは「この問題が解けたらIQ 130!」とかいって問題が出されるが、あり得ない。現代の知能観では、複数の知能因子から「一般知能g」が成ると考えられているので、推理力・記憶力・言語理解などの複数項目を検査しないことには「一般知能g」は算出できないのである。


「IQの高い人は~だ」というのも疑わしいウワサだらけである(例えば「IQの高い人は話すのが速い」とか)。一般知能gが同じスコアでも、どの知能分野が得意か不得意かで、性格や気質はバラバラである。テレビで某高知能団体が、IQの高い人は「話が速い」「話が飛び飛びになる」と言っていたが、それらの相関性を実証した研究はあるのだろうか。同番組で「記憶力も良い」とかいっていたが、例えば、全検査IQは高くとも、作動記憶が苦手という人もいるので、必ずしもそうとは限らない。「話すスピードが速い」というのも同じで、全検査IQは高くとも、処理速度だけ低いという人もいるので、共通の特徴というわけではない。「話が飛び飛びになる」のは、高IQではなく、ADHDの特徴であろう。今までに会った格別に優秀な人たちは、話は首尾一貫して論理的であった。海外の調査だと、高知能の人は、夜更かしする傾向にあり、リベラルな政治思想を持ちやすく、非宗教的な傾向があるという(LSEのSatoshi Kanazawaの研究)。これは統計的な分析に基づく科学的な事実である。日本は統計や実証が弱いので、出典が不明な噂が跋扈している。ネットで何でも調べられるようになったが、一般の人が目にするネットのページに書いてある知能論は間違いだらけなので、本で勉強するしかない。