SERIOUS MAN/作者不明

「シリアスマン」。2009年の作品で、監督は「ノーカントリー」のコーエン兄弟。アカデミー作品賞にノミネートされていた作品。なぜか日本では未公開で、ネット上でしか観れない。敬虔なユダヤ教徒の主人公に次々と不幸が訪れるというブラックコメディ。主人公は特に悪いことはしていないが、なぜか不幸が襲い掛かる。これは聖書でいうところのヨブの話がバックグラウンドにあるように思われる。人に神の御意志は分からないのだ。実際、映画冒頭には「身に降りかかること全てをありのままに受け入れよ」という言葉が示される。彼は聖職者であるラビに相談するが全く役に立たない。しかし、最後、お金に困って不正を犯すと、竜巻がやってくる。良く生きても報われるとは限らないが、悪いことすれば神様は必ず罰するということだろうか。面白いのが、彼が物理学の先生というところだ。彼が「シュレディンガー猫」の説明をするシーンがあるが、これも話の伏線で、物事の不確定性を示しているのだろう。物事はどう転ぶかはよく分からないものなのだ。現実の世界は謎だらけで、結局は神の御意志のままであり、科学やしょせんは人間の聖職者には無力であるとでも言いたいのだろうか。なぜDVD化すらされないのかよく分からないが、良作だと思う。
ところで、アカデミー賞が発表されたが、早く公開してほしい。留学生に聞いたら、すでに台湾や中国では公開されているような作品もある。日本は公開が遅い。最近、映画離れが指摘されているが、娯楽の多様化や映画館の鑑賞料の高さ以外にも、こうしたタイムラグも影響しているような気もする。熱が冷めたころに公開されても、じゃもう少し待ってDVDでいいやってなる人も多いだろうから。