選挙のパラドックの記事を書いたが、長くなるので「全員当選モデル」を紹介しなかった。
*前記事:http://ameblo.jp/zivilisation/entry-11955228835.html


そこで、アメリカの数学者が構築した全員当選モデルを紹介しよう。まず、A~Eの候補者がいて、有権者が55人いる。選好の順位は6パターンしかないとする。次の選好表は、パターン1の人はA候補者を最も好み、Bを一番支持していないということを意味している。


1:A>D>E>C>B  18人
2:B>E>D>C>A  12人
3:C>B>E>D>A  10人
4:D>C>E>B>A  9人
5:E>B>D>C>A  4人
6:E>C>D>B>A  2人  

  

ここで、投票方法が固定化されていないとすると、各候補者はどんな投票方法にしろというだろうか。


A候補者「単記投票方式にしろ!これが一番公平だ!」
これは有権者が1番推している候補者に投票する方法。これだと、Aに18票でAの勝利である。


B候補者「上位二者決選投票方式に決まってる!過半数とれないのに勝利はおかしい!」
これは1回目で過半数取れる候補者のいない場合は、上位2名で再投票を行うというものだ。すると、1回目の投票ではAとBが残る。2回目では、A18票しか入らないが、パターン2~6の人はAとBでより選好の高いBに得票するので37票になり、Bの圧倒的な勝利となる。


C候補者「勝ち抜き方式が最善だ!1~2回の投票では民意は反映できない!」
これは一斉に投票してビリの人が落選し、一人になるまで争う方法だ。まず、1回目ではEが落選する。次は、Dが落選、次はBが落選する。最後は A vs Cになるが、Cが37票で勝利となる。


D候補者「順位評点方式がベストだ!みんなの選好をすべて反映するべきだ!」
これは、有権者は最も推す人に5点、次の人に4点、次に3、2、1点と点数をつけて投票し、総得点で勝利者を決める。上のケースで点数化するとA127点、B156点、C162点、D191点、E189点となる。Dが勝利となる。


E候補者「総当たり決選方式にすべきだよ!全員と勝負すべきだ!」
これは候補者全員が総当たりで決戦を行う方式。すると、次のようにEが勝利する(A対Eだと「18:37」 、B対Eだと「22:33」、C対Eだと「19:36」、D対Eだと「27:28」)。


というわけで、A~Eの全員が当選を主張可能というモデルである。じゃ、投票方式はどう決まるのか、といえばここれは駆け引きになる。これが「政治」である-大声でわめき散らしたり、論理的に自分に有利な投票方式がベストとみんなを説得したり、賄賂を渡したりする。というわけで、民主主義なんてこんなもんで、選挙結果の民意なんてあてにならん。しかし、代わりの統治手段がないので民主主義がベストだという「信仰」のもとに現行制度を維持するしかないのである。