映画「X-MEN」の最新作が絶賛公開中です。アメコミの中でも、すごい好きな作品。バットマンの「ダークナイト」シリーズも好きです。で、「X-MEN」って、特殊能力を持つミュータントの話なんですが、ミュータント差別に対して果敢に挑み、ミュータント至上主義を唱えるのがマグニートー(悪役)。これに対して、良い者なのが、チャールズ・エグゼビア系のX-MENです。といっても、映画を観ているとついついマグニート―側に感情移入してしまう。これってなんか観た構図だなと思ったら、これは、黒人差別反対運動における、「マルコムX」と「キング牧師」の対立がモチーフらしい。


キング牧師は、平和的な手法で黒人差別と闘いました。これがX-MENでいうチャールズ系。キング牧師は日本でも知名度高いのですが、いかんせんマルコムXの知名度は低い。マルコムXは米国では有名な黒人解放運動家。彼はキングス牧師を「白人に迎合するアンクル・トム」と批判した。黒人の父親は何者かに虐殺されたが、自殺と認定され捜査されなかった。母親の肌は白かったが、それは白人に強姦されて生まれたからで、彼女は肌の色を恥じていた。母親は精神を病んで病院に送られ、マルコムは白人の家に里子に出される。その後、マルコムは20歳で強盗を犯し刑務所に入るが、そこでブラック・ムスリムの活動家と会い、その運動に傾倒。その団体から、「X」の名を授かる(黒人の姓は白人の奴隷所有者がつけた管理名みたいなものなのでそれを拒否したのである)。その後、教団を脱退するが、不祥事を暴露したため、暗殺されてしまう。モハメド・アリがマルコムXの影響を受けたことは有名である。キングス牧師は、白人との宥和を説いたが、マルコムXは、人種分離を唱え、黒人民族主義を唱えた。彼にとって白人は憎悪の対象だったのである。※映画で「マルコムX」ってのがあるが、結構オススメ。


最新作の「X-MENフューチャー&パスト」で要なのが、青い肌で赤い髪のミュータント「ミスティーク」。これは肌の色という黒人差別を象徴しているのだろうか。結局、最後、不毛な争いは「赦し」によって終結する。差別の残る現代に赦しについて考えさせる、メッセージ性の強いラストだった。


ただ、難癖付けるとすれば、やはりX-MENは当初はここまで長期のシリーズになるとは思っていなかったらしく、やや話に矛盾などがみられる。例えば、「ファイナルデシジョン」では、チャールズの肉体は滅び、マグニート―も能力を失ったはずだが、今回の「フューチャー&パスト」では二人とも復活している。おまけに今回のラストだといままでの話がすべてなかったことになる結末で、「いままでの闘争はなんだったの感」が否めない。メッセージも作品ごとに異なっている。収益が上がる限りシリーズを続ける気らしく、完結性がない。この点はダークナイト3部作の方が圧倒的に優れている。


あと、これは強く書いておきたいのだが、芸能人を声優に起用するのはやめて欲しい。最初に吹替えを観て、ミスティークの吹替えの間の抜けた感じに失望した。どうせ1~2年で消える芸能人を話題作りのために起用するのはやめて欲しい。その後、字幕版を観てすっきりした。やっぱ米国のプロの女優さんの声の方がいい。剛力さんも頑張ったのだと思うが、殺されそうなシーンではっきりした声色で「やめてー、エリックー」はない。臨場感ゼロ。しかし、これは剛力さんのせいではなく、芸能人を使って話題作りをしようとしている企業の責任である。


とりあえず、X-MENはオススメのシリーズです。一見の価値あり。


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