この前、国会議員の政治資金集めのパーティに行くことがあったのだが、たまたま弁護士が登壇していた。司会者には「弁護士、法務博士」と紹介されていた。詳しくない人では(というか法学部卒でも)、法務博士は普通の博士号と誤認してしまう人が多いように思われる。なお、「法務博士(専門職)」が正式な記載である。専門職学位の場合、「~修士(専門職)」とカッコ内も記載しないと正式には学位詐称である。法科大学院(法務研究科)を修了することで得られる学位で、司法試験の受験資格となる。


 普通の博士号とは違うのかと思うかもしれないが、違う。一般的な学術的な法学における博士号は、法学研究科の博士前期課程を修了し、法学修士取得後に、博士後期課程を修了し博士論文が認められれば得られる「法学博士」のことを指す。法務博士号はランク的には他の専門職学位「修士(専門職)」と同カテゴリである。専門職学位とは、高度専門職業人養成を目指して設置された大学院で授与される学位である。要は一般的な学術的な学位は研究者向け、専門職学位は実務家向けと考えるとわかりやすい。こうした区別はもともとアメリカで行われていて、それを日本が模倣したものである。


 専門職大学院は、教職大学院・法科大学院・公共政策大学院などが代表的である。たしかMBAも専門職学位課程として設置しているところが多い。教育内容は、修士論文がない代わりに取得単位が多いことと、インターンなどがたしか必須になっているぐらいしか差がない(と私は認識している)。修士論文はないが代わりに調査報告書みたいなものを出させる大学院もある。あとは専門職大学院の方が学費が馬鹿高い。正直、学べる内容は大差ないから普通の研究科にいった方がいいと思う。
 では「法務博士(専門職)」だけなぜ他の専門職大学院とは異なり、「修士(専門職)」ではなく「博士」となっているのだろう?これはアメリカの大学院は1年コースを修了すると「LL.M」(法学修士)、3年コースだと「J.D」(法務博士)なので、2~3年制が一般的な日本の法科大学院では、後者の方の学位名を採用しそのまま日本語訳にしたためだ。紛らわしいから名称を「法務修士(専門職)」にした方がいい。博士論文もないのに博士という名称を学位につけることには非常に違和感を覚える。


 前出の弁護士の先生は、以上のことを知ってか知らずが、「法務博士」を名乗っていたが、最後に(専門職)をつけなければ問題である。なんにせよ法務博士は司法試験合格しなければ特に意味のない学位である。学位もあてにならない時代になってきたと感じる今日この頃である。
 
●法学関連の学位
・法学部卒:「学士(法学)」
・法学研究科博士前期課程修了:「修士(法学)」
・法務研究科(法科大学院)修了:「法務博士(専門職)」←「~修士(専門職)」と同位の専門職学位
・法学研究科博士後期課程修了:「博士(法学)」

※一部学位の表記を修正しました。