経済格差の影響が、授業料が比較的安い国公立大への進学にも及び始めている――。そんな実態が、東京大の研究者らの調査で浮かび上がった。年収400万円以下の低所得層と1050万円以上の高所得層では、子どもの国公立大進学率に3倍近い差があった。2006年の調査時にはなかった傾向だ。今回の調査は、昨春、高校を卒業した子どもの保護者が対象。1064人が回答した。国公立大進学率は、400万円以下の低所得層が7・4%。所得階層が上がるほど進学率も上がり、1050万円以上の高所得層では20・4%となった。私立大はそれぞれ20・5%と42・5%だった。
※朝日デジタル:http://www.asahi.com/national/update/0516/TKY201305150616.html


所得階層が低い人たちは、高等教育から締め出されていることがデータで確認されたようです。国公立大の学費は私立大よりも安い。これは貧しい家庭でも高等教育の機会を奪われないための所得再分配として正当化されている。また、こうした一見すると”善意”にみえる国立大の「学費の低価格政策」に対する反対は少ないだろう。しかし、例えば国立大とはいえ東京大は51.8%の学生が世帯所得950万円以上と富裕層が半数以上を占める(2010年「学生生活実態調査の結果」)。これは他の上位国立大にもいえ、偏差値の高い大学ほど高所得者の割合が増える。授業料を画一的に低価格におさえると、その効果は高所得者にも及ぶため非効率的なものとなる。また、現行の制度では、国立大に通う富裕層も学費低価格政策の恩恵を受けるにも関わらず、私立大に通う学生は低所得層であっても国立大よりも高い学費を支払わねばならないという点で不公平である。より効率的な所得再分配は、私立大・国立大・公立大を問わずに低所得者層限定で学費減免措置をとることである。法科大学院でも、地方の国立大は学費が私立大よりも安いにも関わらず大幅な定員割れ。現行の非効率的な国公立大学の学費低価格政策は早急に改正されるべきでしょう。

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