ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]/松竹ホームビデオ
 2000年にカンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞したデンマーク映画。主人公の空想シーンがミュージカルという風変わりな構成。空想以外のシーンはリアリズムを重視しており、自然光による撮影、手持ちカメラでの撮影などまるで現実に起きたことを撮影しているかのような錯覚に陥る。
 舞台はアメリカ。遺伝性の目の病気を持ったチェコ移民の女性が主人公。愛する息子も手術しなければ盲目になってしまう。彼女は工場で働きながら必死で息子の手術費用を貯めていく。周囲の支えもあり順調に手術費用は貯まっていく。しかし、悲劇が起き、あまりに非情なラストを迎える。後半以降がこの映画の価値を決めているが、この世はここまで無情なのかという終わり方だ。しかし、現実でも探せばこの映画のような辛い事例はいくらでも見つかるのかもしれない。その意味で完全なフィクションとも言い切れない。最近観た映画では最も印象深い作品で、パルムドール賞受賞も納得の出来。
名前のない少年、脚のない少女 [DVD]/アップリンク
 ブラジルの新星フィーリョ監督の最新作。南米の作品ということで明るく元気な映画を想像していたが、完全に裏切られた。非常に繊細で抒情的な作品であった。ネットと現実との境界線との曖昧さを、大人と子供の境界に位置する不安定な16歳の主人公を通して描いている。興味深いのが、本作はストーリーで映画を構成しているというよりも、音と映像で観衆の感覚的に訴えてくるようなところ。曖昧模糊として掴みどころがないといえばそうかもしれないが、非常に新感覚の映画だと思う。なんとなくだが「村上春樹っぽい」映画。