自民党の教育再生実行本部(遠藤利明本部長)が理数教育の充実策として、文系を含むすべての大学入試で理数科目を必須とすることや、小学校の理科の授業をすべて理科専門の教師が行うことを提言することが分かった。文系の大学入試では、特に私立大の試験科目は英語・国語・社会の3科目が中心となっている。同本部は、文系の入試に理数科目が加われば中学、高校での理数科目の時間が増え、科学技術系分野に関心を持つ生徒が増えるとの期待をしている。ただ、同本部は若者の「理科離れ」の傾向が止まったわけではないとみている。小学校教諭には文系学部出身者が多く、児童に対して理科の魅力をうまく伝えられていないのではないかと分析。
※一部略
http://news.livedoor.com/article/detail/7529321/
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小学校の理科の授業をすべて理科専門の教師が行うのは良いとして、(実現出来るかは甚だ疑問ですが。理系が専門だからといって理系の楽しさを教えられるとも限りません。特に小学校レベルでは専門性よりも先生の人間性の方が重要でしょう。)、文系入試にも理系必須なのは愚策。入試科目に理数が増えたからといって理系離れが止まるとは到底思えない。諸要因があると思いますが、金銭的な要因も大きいはず。理系は修士課程まで行く人が多く、経済的な負担な重い。また理系は私立大の場合、学費が文系よりも高額なので(初年度納入金でみると平均で理系は35万円文系よりも高い)、低所得層では進学困難。おまけに理系は忙しいのでバイトなどもあまり出来ないと言います。学費も安く(私立大の場合)、学卒就職が一般的で、大学時代にバイトで学費も稼ぎやすい文系を選択するインセンティブが日本では高いのです。おまけに理系の花形だったメーカー系もサムスンなどに追い抜かれ、理系で博士号を取得してもポストドクターが溢れていて、ろくな仕事がない。理系離れというが、医学部の人気が衰えていない。なぜなら医者はそれなりに社会的地位もあり、給料も良いから。投資した教育費用が医学部の場合は高確率で回収できるので人気が衰えないのです。重要なのは、入試に理数科目を増やすことではなく、奨学金などで経済負担を軽減し、理系を選択しやすい制度を構築することです。インドなどでは数学教育が熱心ですが、それはITテクノロジーなどの雇用が多いので理系科目を学ぶインセンティブが高いため。入試科目に理数を設けて無理に勉強させても逆に数理嫌いが増えるだけでしょう。
そもそも、日本は「理系離れ」というが、「国際数学・理科教育調査」では日本の理数の点数は高いのに、理科を楽しいという生徒が少ないという点にも注目しなければならない。自民党は文系教師のせいにしているが、暗記中心の授業内容に問題があるんじゃないでしょうか。そうした数理科目必須化よりも内容的な問題に踏み込んで提言すべきでしょう。
加えて、ニューヨーク市立大学の政治学名誉教授アンドリュー・ハッカーの指摘も紹介しておく。同氏は「代数は、高校の生徒すべての必修である必要はない」とする記事をニューヨークタイムズに掲載し、注目を集めた。同氏の主張は2つである。1つは、数学はアメリカにおいて学校を中退する主要因で、有名大に入れない原因となっている。理系科目はたまたま苦手だが、他の分野に秀でた才能を持っている人にも関わらず有名大から入試科目のせいで排除されるのは不当である。2つ目は、代数は全く何の役にも立たないから、もっと利子計算など具体的な数学に置き換えるべきである。注目すべき点は、1つ目の主張である。こういうタイプの人は意外と多いはずである。19世紀最大の哲学者であるニーチェも数学は苦手だったそうだ。もし仮にニーチェが、大学入試に理数が必須な国に生まれていたとしたら有名大に入れず何らの哲学的業績も残せなかったかもしれない。
日本でも、文系3科目で大学に入れる有名私立大出身者の方が、センターで7科目課されている国立大よりも活躍している。平成12年以降の旧司法試験の累計合格者の出身大をみると、TOP10のうち6校が私立大、2012年の公認会計士合格者の出身大TOP10をみると8校が私立大、衆議議員の出身大ランキングをみてもTOP24校中私立大が16校と多数派、2011年の上場企業の社長出身大ランキングをみてもTOP10のうち7校が私立大。大学スポーツなでも野球の早慶など私立大の方が圧倒的に強い。入試科目に理数が課されることで、そうした理数以外において才能のある人が排除される危険性があるゆえに、理数の入試科目必須化には賛同できない。必要があれば、各大学がそれぞれの裁量で数理科目を加えればいい話でいちいち国の方で指図する問題ではない。多額の費用をかけて国立大を運営する必要があるのかと言う点も問われるべきだ。
※一部略
http://news.livedoor.com/article/detail/7529321/
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小学校の理科の授業をすべて理科専門の教師が行うのは良いとして、(実現出来るかは甚だ疑問ですが。理系が専門だからといって理系の楽しさを教えられるとも限りません。特に小学校レベルでは専門性よりも先生の人間性の方が重要でしょう。)、文系入試にも理系必須なのは愚策。入試科目に理数が増えたからといって理系離れが止まるとは到底思えない。諸要因があると思いますが、金銭的な要因も大きいはず。理系は修士課程まで行く人が多く、経済的な負担な重い。また理系は私立大の場合、学費が文系よりも高額なので(初年度納入金でみると平均で理系は35万円文系よりも高い)、低所得層では進学困難。おまけに理系は忙しいのでバイトなどもあまり出来ないと言います。学費も安く(私立大の場合)、学卒就職が一般的で、大学時代にバイトで学費も稼ぎやすい文系を選択するインセンティブが日本では高いのです。おまけに理系の花形だったメーカー系もサムスンなどに追い抜かれ、理系で博士号を取得してもポストドクターが溢れていて、ろくな仕事がない。理系離れというが、医学部の人気が衰えていない。なぜなら医者はそれなりに社会的地位もあり、給料も良いから。投資した教育費用が医学部の場合は高確率で回収できるので人気が衰えないのです。重要なのは、入試に理数科目を増やすことではなく、奨学金などで経済負担を軽減し、理系を選択しやすい制度を構築することです。インドなどでは数学教育が熱心ですが、それはITテクノロジーなどの雇用が多いので理系科目を学ぶインセンティブが高いため。入試科目に理数を設けて無理に勉強させても逆に数理嫌いが増えるだけでしょう。
そもそも、日本は「理系離れ」というが、「国際数学・理科教育調査」では日本の理数の点数は高いのに、理科を楽しいという生徒が少ないという点にも注目しなければならない。自民党は文系教師のせいにしているが、暗記中心の授業内容に問題があるんじゃないでしょうか。そうした数理科目必須化よりも内容的な問題に踏み込んで提言すべきでしょう。
加えて、ニューヨーク市立大学の政治学名誉教授アンドリュー・ハッカーの指摘も紹介しておく。同氏は「代数は、高校の生徒すべての必修である必要はない」とする記事をニューヨークタイムズに掲載し、注目を集めた。同氏の主張は2つである。1つは、数学はアメリカにおいて学校を中退する主要因で、有名大に入れない原因となっている。理系科目はたまたま苦手だが、他の分野に秀でた才能を持っている人にも関わらず有名大から入試科目のせいで排除されるのは不当である。2つ目は、代数は全く何の役にも立たないから、もっと利子計算など具体的な数学に置き換えるべきである。注目すべき点は、1つ目の主張である。こういうタイプの人は意外と多いはずである。19世紀最大の哲学者であるニーチェも数学は苦手だったそうだ。もし仮にニーチェが、大学入試に理数が必須な国に生まれていたとしたら有名大に入れず何らの哲学的業績も残せなかったかもしれない。
日本でも、文系3科目で大学に入れる有名私立大出身者の方が、センターで7科目課されている国立大よりも活躍している。平成12年以降の旧司法試験の累計合格者の出身大をみると、TOP10のうち6校が私立大、2012年の公認会計士合格者の出身大TOP10をみると8校が私立大、衆議議員の出身大ランキングをみてもTOP24校中私立大が16校と多数派、2011年の上場企業の社長出身大ランキングをみてもTOP10のうち7校が私立大。大学スポーツなでも野球の早慶など私立大の方が圧倒的に強い。入試科目に理数が課されることで、そうした理数以外において才能のある人が排除される危険性があるゆえに、理数の入試科目必須化には賛同できない。必要があれば、各大学がそれぞれの裁量で数理科目を加えればいい話でいちいち国の方で指図する問題ではない。多額の費用をかけて国立大を運営する必要があるのかと言う点も問われるべきだ。
