中田宏元横浜市長が自身のブログに「学校でのいじめ問題 ~子どもたちへの「心の教育」を急げ」(http://www.nakada.net/blog/?p=266)という記事を書いている。大津いじめ事件を例に、日本の精神は蝕まれているとし、その原因を道徳教育の欠如に求め、「心の教育」を急ぐべきと主張している。政治家の発想というものはこの程度なのか?と驚いてしまった。気になる部分をまず2箇所引用する。

・「規律を守り、人に優しく忍耐強い、かつての日本人の姿はどこへいってしまったのでしょう。“昔の日本人”の行動規範からすれば、数をたのんで弱い者を虐めるなど、言語道断。「卑怯者」のレッテルを貼られることは、なによりも屈辱だったはずです。」

・「私は学校でのいじめの陰湿化、毎年3万件以上も発生する自殺、増え続けるうつ病患者などの社会現象はひとつの根っこに由来していると思います。それは、道徳教育の欠如です。欧米では道徳教育のかわりに宗教教育があります。人として「してはいけないこと・するべきこと」を厳しく教えられます。(中略)それでもすべての人が善良な行いをするとは限りません。であれば、日本のように道徳教育も宗教教育も欠落し、ましてや家庭での躾も行われていない中で育ったということならば、いったいどのような人間が形成されるのでしょうか。」


よくある昔は良かった論欧米基準の発想

いじめは昔からあり、有名なものとしては、1979年上福岡第三中学校いじめ自殺事件、1984年大阪産業大学付属高校同級生殺害事件、1986年中野富士見中学いじめ自殺事件などがある。一体「昔」とはいつなのか分からないが、もっと昔だと、旧日本軍は壮絶ないじめで有名だ。戦争中、著名な政治学者の丸山真男が中卒の上官にいじめ抜かれた話を知る人は多いだろう。この中田氏のいう「昔の日本人」とは何時代の日本人のことなのだろうか。

欧米の話を持ち出し宗教教育の話をして、あたかも宗教教育(道徳教育)で人が善良になるような書きぶりだが、宗教教育の行われている欧米の犯罪発生率が日本の数倍から数十倍に達するのはどう説明するのだろうか(日本は世界的に最も犯罪が少ない国の1つ)。また、英国では日本の3倍いじめが起きており、ノルウェー・オランダもいじめ発生率は日本より高い(いじめの定義が各国異なるので厳密には比較できないが)。米国でもコロンバイン高校銃乱射事件の犯人はいじめられていたことが明らかになっており、最近でも14歳の少年がいじめを苦に自殺、ラトガース大の学生がいじめによって自殺するなどいじめは社会問題になっている。そもそもこの人のいう欧米がどこの国か分からないが、宗教教育で人が善良になることはない。

最後に中田氏は、「論理的思考や科学的理解力も大切ですが、それ以上に大切なのは、『人間としての根本はなにか』ということではないでしょうか。現在の我が国の公教育において、それらのカリキュラムが著しく欠如している以上、いじめ・自殺・うつ病、さらには働く気力がなく不正に生活保護を受けるなどの犯罪が増えるのは当然なのかもしれません。本来であれば、経済対策などよりも優先すべきは、子どもたちへの『心の教育』なのだと思います。」と書いている。

本気でこの人は「心の教育」とやらで、いじめ・自殺・うつ病・生活保護の不正受給がなくなると思っているのか??景気が悪くなり就職状況が悪化したから大学生の自殺が増えてるんでしょうが。景気が悪くなるからリストラされたりして欝になったり、生活保護しないといけない状況に追い込まれるんでしょうが。ピントがズレ過ぎてて真面目に反論するのも疲れるレベルだが、政治家がこれじゃ、政治家主導なんて永遠に無理でしょう。「人間としての根本はなにか」も大切だが、中田氏は論理的思考をまず身につけたほうがいいかもしれない。(蛇足だが、生活保護の99%は適正受給。)