階級都市: 格差が街を侵食する (ちくま新書)/筑摩書房

 最近、本屋で見つけて気になっていた本。大学図書館に入ったので読んでみました。かなり興味深い一冊。東京にある「山の手」と「下町」などの都市の断層線を明らかにした一冊。様々な統計資料から東京の格差を明らかにしている。


 例えば経済格差。1人あたりの年間収入は、23区全体を1とした場合、港区は1.61、千代田区1.50、中央区は1.45とどれも平均の1.5倍程度に達する。一方、足立区0.72、葛飾区0.78、江戸川区0.81だ。単純に考えると、上位の区は下位の区の2倍程度の年間収入があることになる。生活保護率では足立区・台東区が高い。高等教育卒業者比率だと、世田谷区・文京区・目黒区などが高く、足立区・葛飾区などは低い。中学生の国語の点数でみても、やはり世田谷区・目黒区などが高い傾向を示し、逆に足立区などは低い傾向がある(港区は意外にふるわないが、これは公立学校の調査だからである。港区は富裕層が多いために優秀層は難関私立に通い調査対象から外れているので平均点が押し下げられている)。平均寿命もやはり世田谷区などの方が高い。見事なまでに富裕層・高学歴が住む区とそうではない区が分かれている。そして、それは子供の学力にまで影響を及ぼしているのである。


 お茶女大の耳塚教授の調査でも親の所得と子供の学力水準との相関性が明らかになっている。階級の再生産である。親の所得・学歴が子供の学力に影響を与えるのは明白だが、これは塾に通えるかなどの差もあるが、文化資本の差の影響もあろう。文化資本とは金銭ではない個人の文化的素養のことで、学識・趣味などだ。日本は階級が明確ではないが、階級によって身のこなし、話し方なども若干の差がある。ある程度のお金があり、親が知的職業に就いているというような家庭で育つと、自然と子供は知的なものに触れる機会を持ち、自然と知性を育める。東大・早慶に通う学生の40.9%は親の年収が1500万円以上という。なお、北海道大の山岸教授の調査だと偏差値の高い大学の方が相手を信頼する傾向が高いという。大企業ではチームプレイを重視するが、偏差値の高い大学に通えば自然と育まれる能力である(これも偏差値の高い大学の方が就職が良いことの要因の1つだろう)。これからも分かるように、富裕層に生まれると高学歴になりやすく、また文化資本の関係で富裕層の地域に住むと、自然と社会の上層の生活行動を身に着けるのである。学識のある親は子供のために住む環境を選ぶというが、以上のことからすると極めて合理的なことだ(「孟母三遷」という故事成語があるが、社会学的に正しい)。


 しかし、著者はこうした階級の固定化は良くないことだと指摘する。下層階級が固定化すると彼らはスパイラルのように落ちていき、結果的に全体のレベルを引き下げられてしまう。また、経済格差があると全体の平均寿命が下がる傾向があるそうだ。経済格差によって上層の人も下層の人も心理的なストレスを受けるためだという。また、文化は交雑した中の方が発展しやすいため、階層などは流動的な方がいいという。階層の固定化は社会を硬直化させ、最終的に崩壊を招きかねない。著者はスカイツリーが下町にできたことで、下町が活性化し経済格差が解消すると期待を寄せる。スカイツリーは、東京が文化交雑する都市へ移り変わっていく際のメルクマールになるだろうと指摘している。