「奇跡体験!アンビリバボー」をみていたら、二俣事件についてやってました。二俣事件は、1950年静岡県磐田郡二俣町(当時)で起きた冤罪事件です。4人が殺害された事件なのですが、当時敏腕刑事と呼ばれていた紅林麻雄警部補によって、すぐに犯人Aが逮捕され、犯人が自白しました。その後、裁判で死刑が確定し一件落着かと思われました。しかし、最高裁によって判決が破棄され、7年後に無罪が確定したのです。

と、ここまでは普通の冤罪事件の話なのですが、この話で興味深いのが山崎兵八刑事の存在。アンビリバボーでは山崎刑事に焦点をあてて話を進めていました。実はこの事件の裁判の時に、本件事件の担当だった山崎刑事は、担当の紅林麻雄警部補の強引な捜査や収賄、犯人Aはアリバイがあり冤罪であるということを警部補に指摘したのですが無視され、やむを得ず新聞社に告発していたのです。裁判でも証言したのですが、裁判所は黙殺。それどころか警察は山崎刑事を偽証罪で逮捕し、挙げ句に妄想性痴呆症と診断し警察を懲戒免職したのです。その後、山崎さんは自宅が放火され、二俣事件に関する冤罪証拠などが滅失しました(警察による証拠隠滅?真相不明)。警察は放火の犯人は山崎刑事の息子と勝手に決めつけ、息子を詰問し続けたそうです。もちろん、精神疾患と診断され、警察も懲戒免職になった山崎刑事は親戚からも絶縁され、当時はまだ村社会の名残もあり村八分状態になったそうです。ただ、冤罪だと主張しただけで、このようなことになるとは山崎刑事は予想していなかったでしょう。ちなみに、山崎兵八さんは89歳で亡くなったそうです。山崎さんがみた二俣事件の真相は『現場刑事の告発』という本にまとめられていますが、自費出版でおそらく手に入れるのは難しいでしょう。ぜひとも再版して欲しいものです。こうした正義の刑事がいたというを覚えておきたいものです。

ちなみに、「拷問王」との異名も持つ紅林麻雄警部補は、幸浦事件、小島事件、島田事件も担当していました。その手法は、被疑者を拷問で責め落として自白を取るというのも(もちろん違法です)。二俣事件を含め、4件が冤罪事件でした。その後警察をおわれ、55歳で脳出血で急逝したそうです。

最近だと足利事件の菅谷さんが再審の結果、無罪となりました。日本の司法は、代用監獄の問題、取り調べの不透明性など数々の問題があります。今後、冤罪等が起きにくい制度設計をすすめてほしいものです。