前、「イントゥ・ザ・ワイルド」という映画を観たのですが、今回はその原作を読んでみました。邦題「荒野へ」という作品です。書いたのはジャン・クラカワー。ノンフィクション作家で有名です。映画よりもやはりノンフィクション性が強いですね。
話は、アラスカで1人の青年が亡くなっているのが見つかる。彼は高級住宅街で育ち、名門大学を優秀な成績で卒業し、ハーバード大学ロースクールへの進学も決まっている学生だった。しかし、彼は進学費用をすべて寄付し、カード・身分証明所もすべて焼き旅に出たのだった。彼はなぜ旅に出たのか?それを追求したのがこの作品。
作品はアメリカでベストセラーになり、その後、映画化されたのです。映画は青年の旅に焦点をあてていますが、本の方は彼に対する批判も紹介しているなど、ノンフィクション作家らしい内容かと思います。「彼のような青年はいくらでもいるのだから、彼を英雄視するのはおかしい」「アラスカに準備不足で挑んだ、ただの愚か者だ」というような意見も紹介されています。しかし、こういった批判に作者は反論します。彼は深刻に悩み旅に出たんだ、と。
意見は様々ですが、この作品がベストセラーになったことを考えると、やはり彼に自己の姿を投影する人が多いのでしょうね。大消費社会・大都市文明からの逃避。このノンフィクションは近代的な問題を提示しているのかもしれません。
荒野へ (集英社文庫)/ジョン・クラカワー

最近読んだもう一冊が、アマルティア・センの新しい一冊「アイデンティティと暴力」。要は、アイデンティティとは理性によって獲得するものであり、与えられるものではないという内容です。文明だとか、文化などというアイデンティティに我々は束縛されるが、それはおかしいというのです。批判の対象は、マイケル・サンデルなどのコミュニタリアンや、「文明の衝突」で有名なS.ハンチントンなどの文明論者。欧米で起きている、一方的なムスリム批判への反論書ともいえる作品。アイデンティティによる人の矮小化を警告する名著。
なかなか良い本でした。セン氏は経済学者なのにこういう政治的な本も書かれるんですね。勉強になりました。国際政治、政治とかに興味ある人にはオススメ。
アイデンティティと暴力: 運命は幻想である/アマルティア・セン

話は、アラスカで1人の青年が亡くなっているのが見つかる。彼は高級住宅街で育ち、名門大学を優秀な成績で卒業し、ハーバード大学ロースクールへの進学も決まっている学生だった。しかし、彼は進学費用をすべて寄付し、カード・身分証明所もすべて焼き旅に出たのだった。彼はなぜ旅に出たのか?それを追求したのがこの作品。
作品はアメリカでベストセラーになり、その後、映画化されたのです。映画は青年の旅に焦点をあてていますが、本の方は彼に対する批判も紹介しているなど、ノンフィクション作家らしい内容かと思います。「彼のような青年はいくらでもいるのだから、彼を英雄視するのはおかしい」「アラスカに準備不足で挑んだ、ただの愚か者だ」というような意見も紹介されています。しかし、こういった批判に作者は反論します。彼は深刻に悩み旅に出たんだ、と。
意見は様々ですが、この作品がベストセラーになったことを考えると、やはり彼に自己の姿を投影する人が多いのでしょうね。大消費社会・大都市文明からの逃避。このノンフィクションは近代的な問題を提示しているのかもしれません。
荒野へ (集英社文庫)/ジョン・クラカワー

最近読んだもう一冊が、アマルティア・センの新しい一冊「アイデンティティと暴力」。要は、アイデンティティとは理性によって獲得するものであり、与えられるものではないという内容です。文明だとか、文化などというアイデンティティに我々は束縛されるが、それはおかしいというのです。批判の対象は、マイケル・サンデルなどのコミュニタリアンや、「文明の衝突」で有名なS.ハンチントンなどの文明論者。欧米で起きている、一方的なムスリム批判への反論書ともいえる作品。アイデンティティによる人の矮小化を警告する名著。
なかなか良い本でした。セン氏は経済学者なのにこういう政治的な本も書かれるんですね。勉強になりました。国際政治、政治とかに興味ある人にはオススメ。
アイデンティティと暴力: 運命は幻想である/アマルティア・セン
