教育格差


(1)序

東大生の親の平均年収は1000万以上。なかなか驚きの数値だ。さらに驚くべきは、東大合格者を多数輩出する都内名門中高一貫校の親の年収は1500万を超えるそうだ。高学歴・高収入の子供は高学歴・高収入になるという、社会階層の固定化が叫ばれている。現在、教育格差はどのような状態にあるのだろうか?


(2)教育格差の現状

お茶ノ水女子大学教育学部の耳塚教授の調査によると、親の年収によって子供の学力に大きな差が見られることが分かった。学力試験の平均点点数を親の年収毎に分類すると、年収1000万円以上の家庭と500万円以下の家庭ではなんと平均点数に20点以上の差があるのである。さらに、勉強時間を比較しても、圧倒的に高所得者家庭の方が勉強時間は長いということも分かっている。

[保護者の所得別 算数の平均点数]

500万円以下  42点

500~700万円  43点

700~1000万円 54点

1000万円以上  66点

さらに、地域によっても差がある。所得格差をみると(ソース:内閣府「平成19年度県民経済計算」)以下のようになる。大企業のある県が圧倒的に裕福で、トップの東京と最下位の沖縄との所得格差は2倍以上にもなる。19位兵庫県までは所得が300万円代だが、それ以降は所得は200万円代に突入する。所得水準の高い地域の方が、教育費にかけられる費用も高く、地域によっても教育格差があるといえよう。

[都道府県別所得水準]
1位 東京都 454万円
2位 愛知県 358万円
3位 静岡県 338万円

46位 高知県 243万円

47位 沖縄県 208万円


社会人の年収を出身大学別でランキングをつけてみると、やはりトップ層には東京大・京都大・早稲田大・慶應義塾大・東京工業大・一橋大などの最難関大学の名前が並ぶ。この出身大学別というのは調査する職種などによってかなり結果に幅があるが、上位層は最難関大学で占められている点には変わりない。

ちなみに、株式会社グローバルウェイの調査だと、1位はやはり東京大学で平均年収は1133万円だ。2位が京都大学の906万円。なお、2010年のデータだと、上場企業で1億円以上の高額報酬をもらっている役員の出身大学の1位は慶應義塾大、2位東京大、3位早稲田大だった。以下、一橋大・中央大・青山学院大などの難関大学や有名大学が並ぶ。


では、そんな難関大学の入試問題はどんなものだろうか?

京都大世界史学過去問

「中国北方の遊牧民モンゴルは、明朝にとり最も警戒すべき外敵であった。明朝がモンゴルに対して行った軍事行動・防衛政策を、時代の変遷に即して、300字以内で述べよ。解答は所定の解答欄に記入せよ。句読点も字数に含めよ。」


京都大の世界史の過去問だが、ここまでのレベルを教えいてる高校は少数派だろう。東大などの難関校に合格者を出す高校は大体決まっている。都市部にある開成・灘・麻布などなどの名門私立校だ。では、ここに入るにはどうしたらいいのかというと塾へ行くのが一般的だろう(親が子供の勉強を見れるほど時間があれば話は別だが)。となると、塾へはやはりある程度はお金のある家しか行けない。ではお金のある家はどこに集中しているのというと、東京などの大都市部だ。大学に行くのにも費用がかかるため、小学校の学力では全国トップクラスの北陸も、都道府県別の大学進学率や東大合格者数では結果が芳しくない。


結局のところ、都市部の富裕層家庭の子女は良い教育を受けて良い大学へ行って専門職に就いたり大企業に勤めてまた富裕層になり、貧困層は貧困層のままという社会階層の固定化が生じているのだ。



(3)教育ビジネス

教育は有益だが、最近はそれを利用したビジネスが目立つ。まだ有益ならいいが、理念だけが先行していたり、ビジネス本位とも思えるものも多い。

都内の某有名私大のある学部は海外研修を卒業要件にしているが、授業料・入学金以外に70~80万円を徴収している。奨学金も用意しているが、経済的な負担は大きい。


次に見るのが海陽学園。愛知県にある全寮制の中高一貫の男子校だ。2006年に中部地区の大企業が出資して200億円をかけて設立された。学費が年間300万円と超高額だ。格差社会の頂点に君臨しているともいえよう。ただ、全寮制で外出する時はGPSで管理したりと徹底した管理教育で話題にもなっている。しかも、初年度に比較して2010年の受験者は3分の1、入学者は2分の1と、募集定員の55%程度しか充足できていない。しかも、初年度の入学者の1割以上が転校しているそうだ。「エチカの鏡」で取り上げられていたそうだが、さすが大企業がバックにいるだけある。ゴールデンタイムの宣伝も思いのままだ。ここの卒業生は2000万円を6年間で費やしたわけだが、果たしてまともな人格形成はされたのだろうか?企業が教育したのだから、さぞかし立派なホモ・エコノミクス(経済人間)が出来上がったのだろう。しかし、大学進学後に一般社会で適応できるのかが見ものだ。

本当に良い教育なのかの選別もこれからは必要だろう。


(4)教育格差

また、早大・慶大・青学・中央・上智などの私大は次々と付属校・系属校の新設を開始した。付属高校や指定校推薦で確実に学生を確保しようとしているのだ。ただ、上位私大の場合は学生の確保というよりも、一般枠を削減して一般入試の倍率を上昇させて難易度を上げようとする目的だとの指摘もあるようだ。ここらへんの付属はやはりお金がかかる。要は富裕層の青田刈り状態だ。


ただ、付属校・系属校の評判はあまりよろしくないようだ。大阪の早大の系属校は初年度の倍率が0.12倍と大幅定員割れ、北海道にも系属校を設置する予定なようだが、こちらはもともとレベルが高くない高校を系属化するようで批判が多い。上智大の付属・提携校もせいぜい中堅校レベルだ。


経済的余裕があれば入るのが楽な付属校・系属校に入って、エスカレーターで進学してしまうのが楽だろう。ただ、大学という高等教育機関の知的な意味でのレベルが地盤沈下しないといいが。大学はそこまで考慮しているのかやや疑問だ。


(5)総括

産業革命によって都市化が進み、また経済の肥大化をうみ、結果的に社会の複雑化を推進した。この影響で欧米では爆発的に公教育の必要性が増したことで、公教育が普及した。現在は、IT革命を経てさらに社会・経済は複雑化し、さらに日本は人口減少に入り平成の開国という名のグローバル化を遂げようとしている。しかし、この社会変化についていく者とそうではない者との格差も広がっている。大企業はアジアからの優秀な学生の受け入れを進めており、日本人新入社員の需要は低下している。グローバル競争が激化する中で、教育は重要性を増しているといえよう。日本がこれからも経済力を維持するには、人材の育成が不可欠である。それは教育によって実現されるが、一部の者だけではなく、すべての者に平等に与えられるべきである。日本の教育格差の縮減がなされるように望むばかりである。