■枋迫篤昌氏とムハメド・ユヌス氏
枋迫篤昌さんをご存知ですか?ずっと前にテレビでやっていて、最近、雑誌で見かけて思い出したのですが、この方はマクロファイナンス分野で活躍している日本人なのです。ワシントンD.Cで「マイクロファイナンス・インターナショナル・コーポレーション」を経営されています。マイクロファイナンスは、ムハマド・ユヌスさんのソーシャル・ビジネスの一形態です。彼は、2006年にノーベル平和賞を受賞されています。ソーシャル・ビジネスとは、特定の社会的目標を追求するために行なわれ、その目標を達成する間に総費用の回収を目指すことであり、マイクロファイナンスとは貧困者向けの金融のことをいいます。

貧困のない世界を創る/ムハマド・ユヌス

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枋迫篤昌さんは、同志社大学卒業後に東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行し、銀行員時代は12年間にわたりラテンアメリカ4カ国(メキシコ、エクアドル、ペルー、パナマ)に駐在しました。要はエリートコースを歩まれていたんですね。
彼の人生を変えるきっかけとなったのが、メキシコであったタペストリー売りの人。彼と仲良くなり家に招待してもらい食事をしたそうです。帰る時に彼の子供に「お兄ちゃん、今度はいつ来るの」と尋ねられ「お兄ちゃんが来てくれたから、半年ぶりに肉を食べられた」というのです。食事の時にスープにういていた薄い何かが肉だったことに気がついたのです。それから数年後に、タペストリー売りの人からその子供は、先進国であれば助けられるはずの軽い病気にかかり命を落としたと、枋迫に連絡があったそうです。医者を呼ぶお金がなかったので、助けられなかったのです。
それがきっかけで、銀行を退職し、「チャンスを与えることのできるインフラ作り」を目指してワシントンDCを中心に活動をはじめたそうです。貧困に喘ぐ移民などに資金を提供し、彼らの生活改善をはかっています。

貧困をなくすことは非常に難しいことです。よく貧困根絶のために援助すればいいという発想がありますが、それだけでは不十分なんですよね。援助しても、相手国の政治家が援助物資を横領したり、相手国は援助してもらえると思って努力をしなくなったりと、一概に援助は効果が出るわけではありません。そこでよりマクロな援助としてソーシャル・ビジネスが注目されたのです。

■日本の年間食糧廃棄量1940万トン>>>世界の年間食糧援助量740万トン
世界ってのはいろいろ矛盾があるんですよね。計算上では現在の食糧生産なら120億人が養えるはずなのに、アフリカなどでは貧困に喘いでいます。日本は年に5800万トンの食糧を輸入し、消費期限だとか食べ残したなどの理由で1940万トンを捨てています(日本の食糧廃棄量はアメリカの廃棄量より多い)。これは3000~5000万人の食糧に匹敵します。世界の発展途上国への食糧援助総量が年に740万トンですから、異常さが理解出来るでしょう。これを聞いて何を思うかは人それぞれでしょう。自由競争なんだから仕方がないという人もいれば、現状を改善しようと思う人もいるでしょう。私は大きく何をどうしようとは思いませんが、必要最低限の食品しか買わず、無駄をなくすということをしたいと思います。そうすれば家計も助かりますよね。ちなみに、家庭からでる残飯量は年間1000万トンで、金額に直すと11兆円。さらに廃棄費用が2兆円です。不経済だと思いませんか?
(cf;地球環境ファミリーシリーズ『地球は今』第8巻『忍びよる食糧危機』)

貧困根絶は難しいことです。まして個人レベルでは無理と思いがちです。しかし、枋迫篤昌氏のようにノウハウがあれば、やや勇気がいりますが、個人レベルでもことを起こそうと思えば出来るんですよね。枋迫篤昌さん、私が尊敬する人の1人です。