2月26日の、G20金融相・中央銀行総裁会議は、通貨切り下げを目的とした政策をとらないこと、世界経済の危機に対し、協調的行動をとることを合意し、閉幕しました。

3月10日の、欧州中央銀行の金融政策決定会合では、ドラキ総裁の1月総会での予言通り、マイナス金利幅の拡大、量的緩和枠の拡大と、市場予想を裏切らない、満点とも言える政策発表をしました。

但し、ドラキ総裁が、その後開催した会見において、マイナス金利幅をこれ以上引き下げないことを発表したことにより、欧州中央銀行には、これ以上の政策余地がないのではないかという不安が市場を過ぎり、その日の欧州市場は軒並みマイナス圏で取引を終えました。

3月15日の日銀政策決定会合では、大方の予想通り、日銀は、現在の政策を維持することを発表しました。翌日に、FOMCを控えていることもあり、積極的な買いも入ることなく、マイナスで引けてしまいました。3月16日のFOMCに俄然注目が集まっている状況ではありますが、3月会合での利上げはスルーするのが大方の見通しです。

世界経済は年初より、乱高下を繰り返し、サウジアラビアとロシアが生産調整に合意したことなどから、原油価格の下落に一定の歯止めがかかり、中国も全人代での財政出動を決め、ようやく落ち着きを取り戻したかのようにも感じますが、依然、予断を許すような状況ではないことは明白です。

世界経済の根源的な問題は、中国という成長エンジンを失い、今後、世界経済を牽引してくれるであろう、明確な成長ドライバーが存在しないことです。確かに、アメリカの指標は力強く推移はしておりますが、格差は是正されず、放置された状況にあるため、内需が喚起されない状況にあります。格差に憤り、格差が固定化し、拡大していくことに絶望した民衆が、トランプやサンダーズという亜流の候補者に熱狂する状況を作っております。

人口動態からみた場合、次の成長ドライバーはインドや東南アジア、アフリカになるのでしょうが、社会情勢が安定せず、インフラが整備されない状況では、成長ドライバーとしての役割を果たすことはできないでしょう。

世界は依然、中央銀行の金融政策頼みの成長を模索しておりますが、資産インフレを起こす、現在の非伝統的手法にも限界が見え始めているのが、欧州中央銀行の政策決定の後のマーケットの状況からも分かります。

緊縮財政が世界のキーワードになっておりますが、世界的権威である経済学者までが、財政出動を要請しておりますから、次なる世界のキーワードは機動的で効果的な財政出動になるでしょう。おそらく、5月のG7では、先進国による財政出動を緩い枠組みであったとしても合意事項に含めるのではないでしょうか。

しかし、成長戦略を描くことなく、金融政策や財政出動をしたとしても、その効果の期間は限定的です。安倍首相は、ガバナンス改革を成長戦略の大きな柱にしたかったようですが、血の通わない、ガバナンス改革などやらない方がましだとしか言えません。

アダムスミスが国富論を唱え、産業革命以来の技術革新により、資本主義が繁栄を極めた世紀は過ぎ去ろうとしております。世界は資本主義に変わる制度を見つけられずにいますが、マネーの暴走は多くの支配層を転覆してまいりましたので、いつしか、アメリカを中心とした世界経済という枠組みは崩壊へと向かうでしょう。

今年は日本でも参議院選挙があり、衆議院も年内解散が濃厚な状況ですので、私たちも政権選択を迫られます。民主党に勢いがないとはいえ、維新の党と合流し、交わらなかった共産党とも選挙協力を取り付け、本気で、もう一度政権をとれるような体制が構築されつつあります。

私たちは、望もうと望まざると、現自公連立政権がよいのか、野党共闘政権がよいのかを選ぶ必要に迫られます。

同盟国であるアメリカも今年は大統領選挙であり、8年間続いたオバマ政権に終わりを告げ、新しい、アメリカが11月には始まります。保護主義の強い政権となることは、予備選の段階からなんとなくみえておりますので、いつかの、日米経済摩擦が再燃する可能性もあります。

今年は申年、マーケットでは申は騒ぐと言いますが、年初から乱高下を繰り返すジェットコースターは、しばらくは方向感もなく、上がったり、下がったりを繰り返すでしょう。

4月(FOMC) → 5月(G7) → 6月(日銀政策決定会合)で、政策イベントは打ち止めになりそうですね。