
ラバウル出征前の水木しげる(右)と父(左)。
水木しげる氏は漫画界で唯一戦場体験を持つ漫画家として有名です。そして自身の戦争体験を下敷きとした戦争漫画も、これまで数多く描かれてきました。
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コミック『総員玉砕せよ!』は、内容の9割以上が事実であると言われています。
水木氏は昭和18年、21歳でニューブリテン島のラバウルに出征。戦いの中、彼の所属する支隊の大隊長・27歳は死に場所を得たいと言う理由から、必要のない玉砕を部下約500名に強います。
コミックでは敵地に切り込んだ大隊長は戦死、以下全員玉砕により部隊は全滅となっています。が、実際には部隊では80名が生き残りました。もちろん水木氏も生存者組の一人です。
隣接地区を守っていた混成三連隊の連隊長は、この玉砕を見てこう疑問を発しました。
「あの場所をなぜ、そうまでして守らねばならなかったのか」
水木氏もこの件については、大隊長は個人としては立派だったかもしれないが、統率者としては若く、未熟過ぎたと述懐しています。
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水木氏は生き残ったものの、昭和19年、米軍の爆撃により左腕を負傷。物資払底のため、左腕の切断手術は麻酔なしで行われました。
戦後、人から片腕を失ってお気の毒等の声を掛けられても、水木氏は「左腕がなかったからこそ戦争を生き延びられた」と、自分はラッキーであったと語っています。
衝撃的なのは、戦友が瀕死の重傷なのに、遺骨を作るため生きながら小指を切断し、負傷者は戦場へ置き去りにして撤収してしまう場面でした。多分実話なのでしょうね。