戦前の日本人は外国人だった -その道徳観について | 太平洋戦争史と心霊世界

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懐中時計 


 先日実家で昭和10年頃の雑誌を見つけたのですが、中身を読んでみるとどうも気になった事がありました。それは現代人と、昭和10年に生きた日本人とでは、倫理的な感覚に相当開きがあったのでは、ということです。

 

 具体的な話は先週記事にもしましたので、興味ある方は以下を参考にどうぞ。

 

■昭和10年初頭の冊子『日曜報知』の広告 【前編】

http://ameblo.jp/zipang-analyzing/entry-11807433185.html

 

■昭和10年初頭の冊子『日曜報知』の広告 【後編】

http://ameblo.jp/zipang-analyzing/entry-11807439458.html

 

 上記記事では新聞広告でも、インチキまがいの宣伝が多いようだ、ということで問題提起しました。

 

また昭和初期の記録で、良い暮らしができるなどの甘言に騙され移民させられた、という詐欺まがいの話も何回か目にしました。その一つとして、以下の琉球新報からの沖縄移民の話を例示しておきます。

 

「沖縄からの海外移住者は1900年にハワイに到着した27人が第1陣。『移民の父』と呼ばれる当山久三の引率で1903年に第2回ハワイ移民が出発、米本土を含め移住が本格化した。1906年にはペルー、1908年にはブラジルへの移民が始まっている。

 

笠戸丸で南米に渡った第1回ブラジル移民の(沖縄)県人は、『盗難紛失の恐れがあるから』と移民事業者に言われて携帯金を預け、そのまま横領された。

 

希望の地で(沖縄)県人を待ち受けていたのは辛酸に次ぐ辛酸。送り込まれた耕地では馬小屋のような住居に雑居生活を強いられ、重労働に従事する。

 

耕地内の売店は高値で掛け売りする仕組みになっており、金をためて郷里に送金するなど到底無理な話だった。耕地から逃げ出す人も相次いだ」


昭和11年 

 

このように昭和時代の手記などを読むと、現代人の道徳観念では受け入れられない、あるいは現代社会では犯罪とされてしまう行為が少なくないのです。

 

私自身、戦前社会にはどこか倫理的に稚拙な側面があるような気がしていたのですが、これだけでは私の主観的な推察となってしまいます。

 

そこで昭和10年当時の犯罪率を調べてみたところ、現代の平成24年と比較しても、全ての犯罪種別において高い発生件数を示していました。(以下参照)



 

■刑法犯罪のうちの暴力犯罪の発生率

(人口10万人中の発生率)

http://p.tl/7sK6

犯罪率 



  上記の犯罪率には詐欺の分類はありませんが、騙されて移民させられたなどの詐欺行為や、誇大広告でお金を巻き上げられた、などの被害も少なくなかっただろう事は類推できます。

 

 戦前の日本人は私たちの先祖ではありましたが、当時の人々と現代日本人の間での意識のかい離を見るにつけ、彼らは実は外国人にも等しい存在だったのではないかと思うに至りました。


 最後に、戦前などの思い出を「昔はよき時代だった」と回想する方がおられます。しかし心理学的調査では、人の記憶は長い時を経て変節し、当てにならないという結果が出ています。

 

 

 

■子どもの頃の記憶は当てにならない?

http://p.tl/ArWD

 

「ハウ氏は今回の研究で、人の記憶が日常の中で固定化し、変わらないまま残る、という解釈は間違いと総括。しかし裁判の場では、目撃証言の信憑性を示す根拠としてまかり通っているのが現状だ。

 

多くの心理学者や神経科学者が目撃証言という手法に批判的なのも、この先入観に異を唱えているためといえる」

 

「過去の出来事を詳細かつ正確に思い出そうとしても、人の記憶が当てにならないケースは無数に存在する。実際、自らが関わった経験の中核部分でさえ、人は誤って記憶する」

 


 

『帝国の時代をどう生きるか』-知識を教養へ、教養を叡智へ、佐藤優、角川書店、2012年