
2013年12月暮れ、安倍首相は靖国神社に参拝しましたが、中韓はこれに反発、アメリカも「失望した」との異例の声明を出しました。これに対する佐藤優氏(元外交官、作家)の解説です。
【動画】安倍首相の靖国参拝に関するアメリカ外交
http://www.youtube.com/watch?v=EfO-L3G1qyM
「韓国のユンビョンセ外相がアメリカ訪問、日本の誠実な対応を要求。ケリー国務長官は歴史問題に言及せず」
アナウンサー:ケリーさん(国務長官)は質問を受け付けなかったという事で、これは日本に対する配慮なのか?佐藤さん、日本にいるとですね、靖国参拝って前からずっときな臭い種ではあるけれども、安倍さんが行ったからって何で今さらそんなに騒ぐかと・・?
佐藤:外国に言われる筋合いはないと、国家の主権行為であって。要するに、我々からしたら何の問題もないことにしていても、よそからどう見られているかっていうのは、また別の話なんですよ。だからそこのところを冷静になって見ないといけないという話なんですよ。
ア:佐藤さんにあえて訊きたいんですが、テレビのコメンテーターの方とかね、この間のアメリカの失望したとの、「Disappointed」とか、要するに大したことないんだよと・・。
佐藤:あ、もうその人は素人です、それだけで。外交の世界の事も英語もわかってないです。「Disappointed」(失望した)っていうのは同盟国で使われることはありません。
「Regret」(遺憾である)とか、「失望する」っていうのは同盟国では使われない言葉なんです。
外交の世界では、その辺の外交ルールってのはピシッとしているんです、言葉で。これは対立している国、それでは使ってもいい。或いは同盟関係にない、中国であるとか、韓国の同盟関係ない、そういう国は使うことあります、「遺憾である」と。
ところが、「Disappointed」(失望した)は「遺憾である」よりほんのちょっと重い感じがする、ニュアンスとしても。
ア:じゃ、相当の事なんですね、これは。
佐藤:相当びっくりさせようと思ってアメリカはわざと使った言葉ですね、これは。
ア:そして、ワシントンで日韓外相会談の後、ケリーさん(国務長官)に質問を受け付けなかったっていうのも、これ日本に対する配慮ですか?
佐藤:それは明らかに配慮です。
ア:もし質問を受けるという事になると、アメリカが窮地に陥るような・・?
佐藤:いや、窮地に陥るんじゃなくて、日本が窮地に陥るんですね。アメリカとしては言わざるを得なくなると、「失望した」と。
ケリーさんはその前に「近隣諸国との関係に配慮しろよ」と、いう事を小野寺さんに言ったと、これ自体が特定秘密なんですよ。
あなたの国が外交で何かやれ外交は国家の専管事項ですからね。それに注文つけるってことは、この前の特定秘密法のまさに特定秘密ですよ、こういうことは。
ア:私なんか素人は日韓のあれについて、「ちょっとちゃんとやってくれよ」みたいに、ただ単に聞きましたけど。
佐藤:同盟国ですから。同盟国っていうのはそういうことをお互いに意見の違いがあるとか、こうやれっていうことを平場に出さないんですよ。会社の中の、議論と一緒ですから。
会社の営業方針違うんで、「これ、専務違うと思います」と、この話を拡声器で外でやっているわけですからね。どういう会社だっていう話になるんですよ。
佐藤:いい話は外へ出すけれども、悪い話は出さないっていうのが同盟国の礼儀なんですけれども、今回は、国務省のスポークスマンが出したでしょ?それで、小野寺さん(防衛相)は黙っていた。これ極秘の話だから。
しかし事実だから訊かれて追認したって形ですよ。ですからアメリカは相当強い圧力を掛けているわけですよ。
それで、韓国との関係で、もし韓国との会談で圧力を掛けたら、日本が反発するっていう計算しているわけですよ。本当に深刻な事だからストレートに言うと。人経由じゃなくて。ですから事態は深刻なんです。
でもそういう論調はほとんどないんですよ。昨日も私の外務省時代の先輩の、東郷和彦さん、条約局長、それから欧州局長やった彼と話して、彼もやっぱり深刻で、なんでこんなに特にワイドショーなんかのコメントがずれてるのかと。大変なことになってるんだけどなーと、こういう話でしたね。
ア:今、佐藤さんが仰った真剣なニュアンスの話っていうのはまず伝わってきてないですね。
佐藤:そうなんです。でもこういう事は1930年代もありましたから。
ア:そうですか、なんか怖いですね。
佐藤:いや、怖いことなんです。