原題:The Thin Red Line、言語:英語、公開:1999(平成11)年、製作国:アメリカ、時間:171分、監督:テレンス・マリック、出演者:ジム・カヴィーゼル、ショーン・ペン、ベン・チャップリン、エイドリアン・ブロディ
1942年のガダルカナル島での戦いを米軍側から見たお話です。
全体を通して自然の有様や独白を交えた静謐さの中に、日本軍と米軍の交戦模様が錯綜する風変わりな構成となっています。普通のドンパチをやる騒々しい戦争映画ではありません。
死後の世界からこれまでの人生を眺めているような、不思議な印象の映画でした。
ブルドッグのような指揮官トール中佐は、無線で部下の中隊長に突撃命令を下すのですが・・・。
中隊長のスタロス大尉は今は無理だとか、部下を死なせたくないと言って命令を拒否します。
しかし攻撃しなければ陣地は取れない。優しいけれど仕事はできない。戦場でのアンビバレンツです。
その後スタロス大尉(左)は中隊長として適任ではないと、指揮官トールに解任されます。
それでも部下たち(右)からは待遇に感謝され、本国勤務となって帰還することになりました。
こんな具合で、登場人物も特にこれといった主人公はおらず、戦闘と共に雑多な人間模様が淡々と展開していきます。
ウィット二等兵は無断離隊を繰り返しては、現地住民部落を訪れ「地上の楽園」のような休暇を楽しんでいました。
上官からは役立たず扱いを受ける彼でしたが、その後徐々に心境の変化が現れて、最後に自ら進んで部隊の囮となり、日本兵の銃弾に倒れます。
映画監督のテレンス・マリックはハーバード大で哲学を学び、パリで教えていたと知り、どおりでこのような内面世界重視の映画が完成したのかと納得しました。
この映画の特徴として、コントラストがあります。自然の静寂さと戦場の猛々しさ、美しい島の風景と流血殺戮、弛緩と緊張、歓喜と絶望。常に対比があります。
人間は戦い負傷し、死んでいくが、自然はそこに佇んで静かに在り続ける。しかし自然とて永遠ではなく、また悠久の時を経て変わり続ける。
私にはこの映画がこの世とは、人生とは一体何か、という哲学的メッセージを放っているように見えました。
あまり内省的な話に興味がない方には、お気に召さない映画かもしれません。独白で兵士の心情を吐露するような場面が頻繁に出てきますから。
視聴者のレビューでは詩的で抒情的とも評されている映画です。