実家で見つけた古本などをご紹介しています。家人に「ホコリが舞う」とか「面倒くさい事をするな」と文句を言われながらの蔵の中探索、第二弾です。
■明治時代の専門書
(右)『金貨本位論』、松本君平、博文館、1897(明治30)年出版。
松本君平(1870-1944):ジャーナリスト、政治家、教育家、思想家、衆議院議員。
(左)『統計学講義 全』、横山雅男、川流堂、出版年不明
横山雅男(1861-1943):統計学者。陸軍大学校で統計学を教授。
■大正末期の高等小学校の教科書
『第三学年用下 高等小学校読本 文部省』
現在の中学3年に相当する、高等小学校3年の国語(読本)の教科書。
大正と昭和の端境期です。1926年は、12月24日までが大正15年、12月25日からが昭和1年でした。
国語の教科書のもくじ。
「支那旅行」、「国語と愛国心」、「国旗と軍旗・軍艦旗」、「富国の急務」など、いかにも戦前らしいタイトルです。
「第四課 乃木大将」のページです。
中3の割には今より難しい言葉を使っている気がしますね。「磅礴(ほうはく)」(注1)って何だと思わず調べてしまいました。
(注1)磅礴(ほうはく):
1 混じり合って一つになること。
2 広がり満ちること。満ちふさがること。
乃木希典(1849-1912)夫妻は、明治天皇崩御の際に殉死しています。気になるのが「世界各国の新聞紙は・・・大将夫妻の壮烈なる殉死を哀悼し、これ実に日本古武士の精神の新日本に磅礴(ほうはく)せるものなりと論じたり」という部分です。
世界各国の新聞は乃木大将の殉死を称賛しているように書いてあります。しかし実際には哀悼の意を表し、彼の功績を評価しても、殉死を褒め称えたとは思えません。西欧で自殺は名誉なことではありませんから、この辺の評価は手前味噌になっている感じがします。
この教科書で学んだ世代は太平洋戦争末期、30代で特攻隊員を送り出す側の年齢になっていますから、乃木大将の殉死を特に取り上げることで、彼らは子供時代から国へ殉ずる精神を刷り込み(インプリンティング)されていたのかもしれません。