
今回は『アラン・カルデックの霊との対話』から、19世紀のフランスの降霊会に出てきた、ある男性霊との通信の模様をご紹介します。
世間では自分の前世に興味を持つ人も多いようですが、実は前世は知らない方が都合がよいのだということを、この事例は語っています。
シルバーバーチは再生(生まれ変わり)はあると断言しています。ではなぜ誕生時に、過去の記憶を何もかも忘れて生まれて来るのか?それは過去の不都合な真実を隠し、新たな人生をゼロからスタートできるようにするための、恵みとも言えるシステムなのです。
以下より引用文となります。
アントニオ・B氏は、才能に恵まれた作家であり、多くの人々から尊敬されていた。ロンバルディア地方における名士であり、清廉かつ高潔な態度で公務を果たしてもいた。
1850年、脳卒中の発作を起こして倒れた。実際には死んでいなかったのだが、人々は――ときどきあることだが ――彼を死んだものと見なした。特に、体中に腐敗の兆候が現れたために、その思い違いが決定的となったのである。
埋葬後2週間してから、偶発的な事態から、墓を開くこととなった。娘が大切にしていたロケットを不注意によって棺の中に置き忘れたことが判明したのである。
しかし、棺が開けられたとき、列席者のあいだにすさまじい衝撃が走った。なんと、故人の身体の位置が変わっていたのだ。仰向けに埋葬した体が、うつぶせになっていたのである。
そのため、アントニオ・B氏が、生きたまま埋葬されたことが明らかとなった。飢えと絶望に苛(さいな)まれつつ亡くなったことは間違いなかった。
家族の要請で、1861年に、パリ霊実在主義協会において招霊されたアントニオ・B氏は、質問に対して次のように答えた。
――招霊します・・・。
「何のご用でしょうか?」
――ご家族の要請があってお呼びしました。ご質問にお答えいただけると、たいへんありがたいのですが。どうぞよろしくお願いいたします。
「よろしい。お答えしましょう」
――死んだときの状況を覚えていらっしゃいますか?
「ええ、覚えていますとも!よく覚えていますよ!しかし、どうして、あの忌まわしいことを思い出させるのですか?」
――あなたは、間違って、生きたまま埋葬されたのでしたね。
「ええ。でも無理もなかったのです。というのも、あらゆる兆候から、本当に死んでいるように見えたのですから。体も、完全に血の気を失っていました。実は、生まれる前からああなることに決まっていたのです。したがって、誰も悪くないのです」
――こうした質問がぶしつけであれば、中止いたしますが。
「続けて結構ですよ」
――あなたが、現在、幸福かどうかを知りたいのです。というのも、生前、立派な方として多くの人に尊敬されていたからです。
「ありがとうございます。どうか、私のために祈ってください。
では、答えることにいたしましょう。精一杯、頑張るつもりですが、うまく行かなかった場合は、あなたの指導霊たちが補ってくださることでしょう」
――生きて埋葬されるというのは、どんな気持ちがするものでしょうか。
「ああ、本当に苦しいものですよ。棺に閉じ込められて埋葬される!考えてもみてください。真っ暗で、起き上がることも、助けを呼ぶこともできない。声を出してみても、誰にも届かないのです。
そして、すぐに呼吸も苦しくなってくる・・・。空気がなくなるのです・・・。何という拷問でしょう!こんなことは、ほかの誰にも体験させたくありません。
冷酷で残忍な人生には、冷酷で残酷な処罰が待っているということなのです・・・。私が何を考えてこんなことを言っているかということは、どうか聞かないでください。ただ、過去を振り返り、未来を漠然とかいま見ているのです」
――「冷酷な人生には冷酷な処罰が下される」とおっしゃいましたね。しかし、生前のあなたの評判は素晴らしいものだったのではないですか?とてもそんなことは考えられません。もし可能なら、ご説明いただけませんんか?
「人生は永遠に続いているのですよ。
確かに、私は、今回の人生では、よき振る舞いを心がけました。しかし、それは生まれる前に立てた目標だったのです。
ああ、どうしても、私のつらい過去について話さなくてはならないのでしょうか?私の過去は、私と高級諸霊しか知らないのですが・・・。
どうしても話せというのなら、しかたがない、お話しましょう。私は、実は、今回よりも一つ前の転生において、妻を生きたまま狭い地下倉に閉じ込めて殺したことがあるのです。そのために、今回の人生で、同じ状況を引き受けたということなのです。<目には目を、歯には歯を>ということです」
――ご質問にお答えくださり、本当にありがとうございました。今回の人生に免じて、過去の罪を許してくださるように、神にお祈りいたしましょう。
「また来ます。エラスト霊がもう少し補って説明したいようです」