艦の呼び方には艦船、艦艇、軍艦など色々あります。これらは呼び方が違うだけでどれも同じ艦かといえば、厳密な区別があります。
まず「艦船」というのは、艦艇・特務艦艇・雑役船を総称した言葉です。
艦船のうちの艦艇が、いわゆる旧海軍の花形分野です。艦艇はさらに軍艦・駆逐艦・潜水艦・水雷艇・掃海艇に分類されます。実は駆逐艦・潜水艦は軍艦ではありません。艦艇や軍艦についてはまたのちほど取り上げます。
特務艦艇は特務艦と特務艇の総称で、後方支援用の艦船です。
特務艦には以下のものがあります。
運送艦(武器・人員輸送)
工作艦(艦の修理を行う)
給油艦(燃料を搭載)
給糧艦(食糧を搭載)
砕氷艦(氷を割って進む)
測量艦(測量・測地を行う)
標的艦(爆撃訓練の攻撃目標となる)
特務練習艦(練習・教育用)
給糧艦「伊良湖」。艦隊に随伴し食料を供給する。
特務艇には以下があります。
敷設艇(水中機器などを敷設)
掃海特務艇(海中の機雷を排除する小型船)
掃海特務艇。日中戦争より掃海艇が不足したため、トロール漁船を徴用したもので掃海艇の小型版。
雑役船は例として下記が挙げられます。
交通船(人を輸送する小型船)
救難船兼曳船(海難救助・沈没船の引き揚げ)
海洋観測船(対潜戦用に海底地形などを調査)
旧海軍では、これらは地味な分野として敬遠されがちで、補給部隊に所属する士官の指揮権は、戦闘部隊である兵科将校よりも下に置かれていました。
一方、米軍では補給部隊も戦闘部隊も変わらずそれぞれ重要性を持つという考えで、日本では花形とされた兵科だけを重視することはありませんでした。
結果として日本軍は、米軍に戦闘で大差をつけられてしまいましたが、その原因として補給分野の軽視があり、その傾向が補給部隊の差別待遇にも表れています。