ここで孫崎氏(親中・反対派)と佐藤氏(親米・賛成派)の解説のまとめをします。以下の緑色は既出の記事でリンクになっています。
●アメリカが日本にTPPを導入させたい理由
(1)
アメリカの巨大企業が儲けるため(孫崎氏)
(2)
ブロック経済体制を作り、中国を遮断するため(佐藤氏)
●日本がTPPに参加する理由
(1)
アメリカとの関係改善のため(孫崎氏)
(2)
TPPは日米安保体制と一セットになっているため(佐藤氏)
佐藤氏のように大局で見るか、孫崎氏のように目の前にある利害関係で見るか・・・。
以上から、日本がTPPに参加する主要な動機はアメリカとの体制を強化するためです。(孫崎氏・佐藤氏)
一方でアメリカが日本をTPPに参加させたい理由は、アメリカの巨大企業に利益を得させるため。これは孫崎氏の主張ですが、確かにISDS条項で国内に何らかの損害を被りそうです。
孫崎享氏(元外交官・評論家)
また佐藤氏のほうはブロック体制で中国を締め出すためと解説し、TPPは将来を見越した安全保障体制の強化に役立つと見ています。しかし国内で何らかの負担が出るだろうと述べていますが、それが孫崎氏の言う米企業の日本進出でしょう。
佐藤優氏 (元外交官・作家)
つまり賛成派の佐藤氏は、将来の世界体制作りへのビジョンまで予見して、大局でTPPを捉えています。
しかし反対派の孫崎氏は米企業の進出による国内の損害という、小局の枠でTPPを捉えており、万一TPPを締結した場合は世界情勢はどうなるか言及していません。
元外交官の佐藤氏は、「外交安全保障をやっている人はこれ(TPPと安全保障の関係)が見えると思う」と述べていますので、やはり元外交官の孫崎氏がわからないはずないと思います。
親中国の孫崎氏は、TPPに加入すると日本が中国から離れてしまうので、「TPPはブロック体制」というのが分かっていても、口には出さないのかもしれません。
一方で親米・賛成派の佐藤氏は、尖閣・TPP問題にしても、アメリカと中国の絡みの部分には一切言及しないところが気になります。
例えば尖閣問題では、中国がロビー活動・米シンクタンクへの献金でアメリカに影響を及ぼしているとか、アメリカが中国に借金をしており、中国を無視できない部分には何も触れません。
TPPはブロック経済体制といいますが、万が一日本が加入した後、中国も入りたいなどと言い出すことはないのでしょうか。それではブロック体制にならないと思いますが。
要するに2人とも、自分の都合の悪い事実は表に出さない傾向があります。ここの部分は注意ですね。
佐藤氏のような、多少の損害が出ても「肉を切らせて骨を断つ」方式で大局的に見るか、孫崎氏の日本の損害は絶対に出さないと言う、小枠で見る方が良いのか?
結局国益をどの視点から選択するのかで、賛成・反対に分かれることになります。一概に何が何でも賛成・反対に固執すると形式主義に陥り、日本にとって何がよりベターなのかという、大事なことを見失ってしまいそうです。
私は賛否の派閥にこだわるより総括的に見て、どちらかでもより良いほうを選択したほうが賢明ではないかと思います。
TPP交渉は極秘とされ、中身がブラックボックス化していることも、さらに分からなさに拍車をかけています。