言語:日本語、公開:1953(昭和28)年、製作国:日本、
時間:104分、監督:阿部豊、出演者:藤田進、舟橋元、佐々木孝丸、伊沢一郎
天一号作戦とは戦艦大和の水上特攻の事ですが、昭和20年4月7日、大和が沖縄特攻に出撃し、米軍の攻撃で爆沈するまでの一部始終を描いた内容です。
これは吉田満原作の『戦艦大和ノ最期』を映画化したもので、吉田氏は予備士官少尉として大和に乗艦し、九死に一生を得ています。
紙を読み上げているのは第二艦隊の伊藤整一司令長官(中央)。
伊藤長官は身長180cmほどありましたが、実際に長身の俳優さんが演じていました。伊藤さん役はいつも品格のある俳優さんが演じていますね。
右端が有賀(あるが)幸作艦長。本人はお茶目な人だったと聞いていますが、映画の中では真面目な印象でした。
原作の吉田満氏は大学出たての予備士官・吉村少尉として登場します。(中央)
ガンルーム(第一次士官室)で、江田島組(兵学校卒)と予備士官組(大卒)のお馴染みの対立が始まります。
出ましたッ!\(゜□゜)/ 「世界の三バカ、無用の長物は万里の長城、ピラミッド、戦艦大和だ」
「おい、貴様たち予備(士官)の奴らは、屁理屈が多くていかんぞ!」
双方殴り合いのケンカになろうとしたところ、ガンルームの室長、臼淵(うすぶち)大尉(中央)が仲裁に入ります。
実際の臼淵大尉は当時21歳だったのですが、かなり年上の俳優さんが演じています。経歴を見たら当時40歳でした。映画の中では実物相応の若い俳優さんにやらせると、説得する室長という貫禄が出なくなるのかもしれません。
史実通り、兵学校出たての少尉候補生たち(左側)は、将来性を考えて大和から降ろされます。
こうして昭和20年4月6日、大和は沖縄水上特攻のためオモチャの艦で出撃します。CGなしの昭和28年製作なのでやむを得ない処置です。
戦闘開始後、頭の中だけ逝ってしまう人が出てきます。
大和沈没間際になると、伊藤長官は自室に籠り自決。有賀艦長(右から2番目)は艦と共に沈むため柱に縛り付けてもらいます。
(映画ではなく)後の話では大和沈没後、海を泳ぐ有賀艦長の姿を目撃したという生存者がいました。 彼が「あっ、艦長だ!」と叫んだところ、目の合ったその人物は海の中に潜ってしまいました。これは見間違いではないかとも言われていますが、真相は藪の中です。
大和沈没後も米軍はしつこく海中に数時間も機銃掃射
を撃っており、これで命を落とした漂流者も多数に上りました。日本海軍では海での遭難者を攻撃する習慣はなかったため、一同憤慨に絶えなかったそうです。
この映画は結構淡々とした内容で、あまり胸の痛むような悲壮さは感じませんでした。大和関連の映画を一番悲哀を感じさせる順に並べると、私的には以下の通りになります。
「連合艦隊」>「男たちの大和」>「戦艦大和」
1953(昭和28)年製作というと、今から60年前です。この年の戦争映画がやけに多いと思ったら、1952(昭和27)年は米軍の日本占領が終わった年だったのでした。だから規制がなくなったため、多くの映画が製作されたのでしょう。
キーワード:海軍、戦艦大和、沖縄特攻、天一号作戦、伊藤整一長官、有賀幸作艦長、能村次郎副長、臼淵大尉、吉田満、『戦艦大和ノ最期』