尖閣問題・中国のレーダー照射について【佐藤優氏】 | 太平洋戦争史と心霊世界

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 1月には19日と30日の2回、中国海軍から海自へのレーダー照射がありました。この件について、元外交官・佐藤優氏の解説を掲載します。


【動画】2013-2.15 佐藤優 くにまるジャパン(4328

http://p.tl/jMr5



レーダー照射 


●中国海軍の日本へのレーダー照射の捉え方

 

これは日本に戦争を仕掛けているのかという、とんでもない話。火器管制用レーダーというのは、ターゲットにレーダーを当てると形や動き方を覚えるようになっている。

  そしてミサイルを発射すると、ターゲットが消えるまで追いかけてくる。何か邪魔者が間に入っても、その障害物を回避してなおも追いかけてくるというシステム。

 

これを当てるというのは、「お前を殺してやる」というのと同じこと。人間で例えると、弾を込めたライフルで相手の頭に照準を当てて、引き金に手をかけた状況。

  国際基準でもそのような状況下では、やられるかもしれないから正当防衛で撃ち返しても構わない。戦争寸前の所を中国は仕掛けてきたという事。

 

 

●中国はレーダー照射は日本のでっち上げだと主張

 

こういうケースはよくある。官僚組織は「部下は嘘をつかない」という前提で動いている。部下が「やってない」、相手が「やっている」と言う場合は、部下の方を信用する。

 

この場合重要になるのはインテリジェンス。情報の裏社会では「リエゾン」という秘密警察の使いの者がいる。そこで両国のリエゾンが会って、真相はどうだったのか、故意にやったのか、故意だとしても上の命令か、現場の独走かという本当の話を聞いておく。

 

この話は表の事件に影響を与えないと合意しておいて、裏で実態を聞いて偶発的なケンカにならないように抑えておく。今回は中央政府の意図ではなく、現場の独走で偶発的に起きた事だとすると、「以後やるなよ」という形で表に出さず、裏で処理する形にしておく。

 

 

●動画の非公開について

 

これは公表しない方が良い。火器管制レーダーの能力をどの程度察知できるかという、日本(海自)の能力が分かってしまう。すると、これを超える開発をすればよい。どこに日本の弱点があるかということが専門家にはわかる。



護衛艦 


●外務省の腰が引けている

 

防衛省は今回実によくやっている。しかし国会の答弁で小野寺防衛相が出てきて、「国連憲章に違反する武力の威嚇だ」と言っている。これは筋から言うと、外務省が出てくるべき。

 

国会で外務を統括しているのは外務省。国際法の有権的な解釈というのは、外務省の国際法局長が政府で行っている。そこで防衛相が出てくるとなると、国際基準では軍が前面に出て国際法の解釈をする国になってきているということになり、国際的に非常に不思議なイメージとなる。

 

そうすると軍政に近づいているのかという印象になる。これは日本の外務省の腰が引けているため。外務省トップが「騒いだら国際的にどう見られるか」と恐れているので防衛相が前面に出てきている。これは日本側から見て非常にまずい。

 

 

NSC(国家安全保障会議)とは何か

 

(平成25年2月15日、安倍総理は総理大臣官邸で、第1回となる国家安全保障会議の創設に関する有識者会議を開催した。)

 

NSC(国家安全保障会議)とは、防衛戦争を決定するところ。これを新聞・政府は全部ボカして説明している。

  これは戦争を始めていいかどうかと決定するための専門機関。危機的状況に陥った時、首相が「これはやるしかない」と決定し、迎撃するための準備を整え、最終的な決定を下す。



プーチン首相 


●レーダー照射に対するロシアの論評

 

ロシアは「中国はやってないというがやっている。以前台湾海峡でもあった。これは中国のやり方だ。しかも事前に日本にレーダーを当ててやるぞと言っていた中国人がいる。軍の中で調べてみろ」と言っている。これは相当レベルの高いインテリジェンス情報。それを出して日本にメッセージを流している。

 

では何故ロシアがそんなことをするのか?中国は戦争を平気で仕掛けるような恫喝をやるという事は、いつロシアにも矛先が向いてくるかもわからない。こういうゲームのルールを守らない人は困る、ここは少し締めましょうというメッセージ。

 

それを日本政府はきちんと踏まえているかどうかという事。中国は本当にひどい。最初は開き直ろうと思っていたが、国際情勢や国際法を見ると、「ヤバい」、やっていた事が発覚したらえらく非難されると、それだったら無かったことにしよう。日本は柳条湖とかでっち上げが得意だから、またそのお家芸がでてきたと国内では言っている。こういう嘘つきとは付き合えない、中国はとんでもない国。

 

 

●しかし現在は「リエゾン」(秘密警察)が水面下で動いているのでは?

 

やっていない思う。起きた後に何かやるのではもう遅い。もう(中国は)決めてしまった訳だから、日本がいくら証拠を出しても、いくら説得をしても、「嘘つきだ」と言うしかない。

 

中国国内では「日本は全世界を敵に回して戦争をやったし、日本は悪知恵が働く。どんな悪辣な事でもやるのが日本人だ」と言っている。それで切り抜けられると思っている。すると国際社会はあまり関心ないから、「どっちもどっち」という感じになる。

 

 

●アメリカもロシアもレーダー照射を非難しているが、この意図は何か?

 

非難されれば中国は2回同じことをできなくなるから牽制にはなる。しばらくレーダー照射はできない。

 

ただ中国のように、国際社会で確立されているゲームを一方的に変更しようとするのは、少し乱暴な表現をすると、ベルサイユ体制を一方的に壊したナチスドイツと同じ。自分たちの言い分があるなら、外交交渉なり国連に出てこい、力に任せるのはやめなさいと言うべき。

 

やはり外務省が後ろできちんとした形でフォローすると同時に、国際法的な主張をしないとダメ。


尖閣諸島



●今重要なことは?

 

日中のホットラインを作る。また海難事故防止という観点において、フィリピン、インドネシア、シンガポールなどと、中国と2国間ではなく東シナ海全体での衝突・トラブルを防止するためのマルチメカニズムを作ること。

 

そして国際社会の目で中国を抑えないといけない。道路交通法でいうと、中国だけ逆進したり、スピード違反を犯したりしている。それを守らせるためにほかの国とルールを作って中国に守らせる。

 

 

●中国人とうまくやっていく方法はあるのか?

 

これは現役の外交官だったら言えないが、ソフト封じ込め」策。ソフトな感じで封じ込める。要するに共通のゲームのルールを守らせる。共通の文化を守りましょうという形でやっていく。

 

米国がやっているのはこれだが、そこで日本と問題になるのが慰安婦問題。慰安婦問題で日本がアメリカと違うスタンスで物を言っていると、「ソフト封じ込め」をやるときに日本は価値観が同じ国と言えなくなってしまう。

 

中国に対してはエチケット・マナーの話にしていくという形で封じ込めていかないといけない。