言語:日本語、公開:1989(平成1)年、製作国:日本、
時間:114分、監督:五社英雄、出演者:萩原健一、三浦友和、竹中直人
タイトル通り、昭和11(1936)年2月26日に陸軍青年将校が起こしたクーデター未遂を扱った映画です。
映像は反乱軍からの視点で捉えられており、反乱軍・鎮圧軍のどちらにも偏らない公平な見方をしています。 当時は豪華キャストで話題となったようです。
当時は経済不況で農村は貧窮しており、青年将校たちは国の現状打開のためクーデターを起こそうとしていました。
腐敗している天皇側近が天皇の意向を妨げているとみなし、彼らを殺害して天皇に現状を訴え、直接国政を行ってもらおうと考えていました。
2月26日の雪の降りしきる晩に決起しました。天皇側近の6人を暗殺するため私邸や宿泊地に向かいました。
反乱軍は岡田啓介総理を殺害しようとしましたが、秘書の松尾伝蔵が身代わりとなりました。
実際の事件では松尾氏が自ら将校の前に走り出て殺害されました。覚悟の死だったと言われています。もともと二人は容姿が似ていたため、将校たちも岡田総理を殺したと思い込んでいました。
侍従長だった鈴木貫太郎も銃撃されました。将校が軍刀でとどめを刺そうとしたところ、奥様が「もう年寄りなので、とどめだけは止めてください!」と必死に懇願したので一命を取り留めました。
その後、鈴木貫太郎は最後の戦時内閣首相となり、1945年終戦工作に奔走することになります。終戦直前の宮城事件でも狙われて助かり、二度命拾いをするという数奇な人生を歩みました。
内大臣・牧野伸顕のように逃げて助かった人もいましたが、高橋蔵相、斎藤内大臣、渡辺教育総監と、岡田総理の身代わりの松尾氏の計4人が殺害されました。陸軍の予算を削減したとか、天皇側近だからなどが殺害理由でした。
反乱軍鎮圧に戦車が登場。
九十二式のようです。戦車は建設機械を改造して造られました。
将校たちをリーダーとした反乱軍は籠城しますが、そのうち一人の兵に、満期除隊で家に帰れないと家族が路頭に迷うので困ると言われます。
国民の窮状を打破するために始まった反乱なので、兵の言うことを聞かないわけにはいきません。そこで下士官兵は解散させることにしました。
最後は反乱将校だけとなり、結局は鎮圧軍に掴まり最後は銃殺刑となります。
リーダー格の安藤輝三大尉(左・三浦友和)と野中四郎大尉(中央・萩原健一)は自決を選びました。映画の中で安藤大尉はピストル自殺 して死んだように見えますが、実際は一命を取り留め、後日改めて処刑されました。
私の勝手な見方ですが、この映画のテーマは「正義とは何か」でしょうか。
反乱将校はクーデターを起こし天皇に国の窮状を訴えようとしましたが、この事件当時の天皇は反乱軍に対して激怒していました。結局将校たちは天皇から共感を得ることはできませんでした。
彼らは良い事(世直し)をするために必要のない殺人を行うという行為を選択しました。その動機が世直しという良い事であっても、それを達成する手段が殺人という良心の咎めをうける行為です。これを数式にすると、
悪い事(殺人) ― 良い事(世直し)
= 悪い事が多くなる、つまり相当なカルマを背負う
と、殺人からどんなに良い事を差し引いても、結局悪い事の方が多くなると思います。天皇側近4人だけでなく、警備員たちも殺されていますから。青年将校たちにはそれが彼らなりの正義であったのですが、考え方が歪んでいました。
でも殺人と言っても、戦争は虐殺を除いて自分を守る正当防衛の理由がありますからまた違ってきますね。
それからこの映画は反乱将校の奥様方を登場させて、逆賊と言われた軍人たちの人間的側面を見せているところがウリとなっています。
最初から最後まで雪と寒空に囲まれた画面で、寒がりの方には余計寒く感じられるかもしれません。
寒そうですが映像が美しい映画です。
【動画】映画『226』 予告篇(2分42秒)
http://www.youtube.com/watch?v=MahzyRPqQmw
キーワード:陸軍、226事件、クーデター未遂、九十二式重装甲車、昭和11年