
前回の続きでアメリカ国民の性格についてです。①理想主義は前回述べたので、②実用主義、③非干渉主義を取り上げます。
●アメリカ人の実用主義
アメリカ人の中で二番目に強いと言われるのがこの実用主義です。以前アメリカ軍の兵法はクラウゼヴィッツ式であると書きました。この思想は、
「戦争は感情的な行為の発露ではなく、政治的な目的を達成するための手段である。
従って、その政治的な目的が持っている価値によって、そのために犠牲になる大きさや量・期間を決めなければならない。もし戦力が政治的な価値を上回った場合、その目的を断念しなければならない」
という考えを持ちます。これを例えば市井のアメリカ人に語らせると、次のような会話になります。
「戦略大学校の学生に『何のために戦争に行くのですか』と聞けば、彼らは『職業軍人として、政治指導者が命令したときに行く』と答えるだろう。
その彼らに『何のために息子や娘を戦争にやるのか』と聞いてみればいい。彼らの答えは逆転する。
要するに米国民はアメリカという国家への見返りが犠牲以上に大きくなければ、出兵はしないという考えを持っています。尖閣諸島問題でも、このようなアメリカ人の国民性を踏まえて考える必要があります。

●アメリカ人の非干渉主義
モンロー主義に代表されるように、他国に干渉せずという非干渉主義は、アメリカ外交と軍事政策の基本方針となってきました。
そのルーツは、1796年9月のワシントン大統領の「さよなら演説」に遡ります。
「ある国が別の国に対して熱烈な愛着心を持てば、さまざまな邪心が生まれる。友好国に同情すれば、現実に存在もしない共通の利益に関する幻想が生まれやすく、・・・適正な動機や正義がないまま、友好国の紛争や戦争に加担することになる」
1939年9月1日、ナチスがポーランドへ進攻し、第二次世界大戦が始まった時、アメリカ国民の戦争参加への支持率はたったの2.5%に過ぎませんでした。
フランスが陥落した後も、外国に侵略を諦めさせるだけの軍事力があればいいと、依然として戦争への参加を拒否していました。
ところが日本が真珠湾を攻撃すると、アメリカは孤立主義から一転して、他国とのかかわりを強める国際主義へと転向しました。
しかし戦争が終結すると、戦地からの軍隊の撤収ということで再び非干渉主義が強まり、朝鮮戦争などの紛争が勃発すると再び国際主義になるというように、アメリカは孤立と干渉の合間を揺れ動いてきました。
現在のアメリカは、将来再び孤立主義に傾くのではないかとの憶測がなされています。
というのは米国内でシェールガス革命がおこり、石油を確保するための中東情勢をあまり懸念する必要がなくなってきたためです。アメリカは今後一層内向きとなり、他国に非干渉となるのかもしれません。
以上、アメリカが関わる国際問題にしても、解決策のヒントとして、アメリカ人の性質を知っておくことも肝要ではないかと思います。